中東かわら版

№64 モロッコ:ポリサリオ戦線新書記長にイブラーヒーム・ガーリー

 7月9日、ポリサリオ戦線は、アブドゥルアジーズ前書記長の死去(『中東かわら版』2016年6月3日付、No.39)にともなう次期書記長選出のための緊急会合をダフラで開催し、イブラーヒーム・ガーリーを新書記長に選出した。候補者はガーリーのみで、全1895票のうち1766票の賛成票を得た。ポリサリオ戦線書記長は西サハラの亡命政府「サハラ・アラブ民主共和国」(SADR)の大統領を兼任するため、ガーリーは同大統領にも就任した。なお、SADRを主権国家として承認している国は、アルジェリア、南アフリカ、サブ・サハラ諸国、ラテンアメリカ諸国など40数カ国に限定されている。

 ガーリー書記長は就任演説において、西サハラの独立という課題に皆が立ち向かえるようポリサリオ戦線の政治組織を強化する改革に着手すること、また武装闘争を含むあらゆる挑戦に対処するためサハラ解放軍の強化に努めると述べた。

 イブラーヒーム・ガーリーの経歴は以下の通り。

  • 1949年9月Smara生まれ、66歳
  • 主な経歴
    ポリサリオ戦線創設メンバー
    1973年~ 対スペイン、モロッコ、モーリタニア闘争に参加
    1976-1989 ポリサリオ戦線執行委員会メンバー
    1976-1989 SADR国防相
    1989-1993 サハラ解放軍(軍事部門)第2連隊司令官
    1993-1998 SADR国防相
    1999-2016 ポリサリオ戦線民族事務局メンバー
    1999-2004 駐スペインSADR代表
    2008-2016 駐アルジェリアSADR代表

 

評価

 次期書記長にガーリーが選出されることは予想されていた。彼は組織創設メンバーであり、武装闘争の中心にいたことから西サハラ独立闘争の本流にいる人物であること、また西サハラ独立の最大の支援者・アルジェリアと太いパイプを持つ人物であることが理由である。アルジェリアのブーテフリカ大統領はガーリーの書記長選出に際し祝電を送り、一方ガーリーは自身の最初の外遊先はアルジェリアであると発言したように、アルジェリアとポリサリオ戦線の友好関係は今後も続くであろう。

 ガーリーは、ポリサリオ戦線内部では対話重視の穏健派というより武装闘争も視野に入れた独立闘争を目指す人物とされる。西サハラの地位に関する住民投票の実施が棚上げとなって20年以上が経過し、サハラ住民には現状に対する不満が募っている。今後注視していくべき点は、ガーリー書記長体制がモロッコ、国連、その他諸外国とどのように遣り合っていくのかという問題はもちろん、内部の不満にどう対処していくのかという点も重要であろう。

(金谷研究員)

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