イスラーム過激派モニター(会員限定)
2022年8号 イラク・シーア派民兵によるトルコ軍への攻撃
No.M22-08 2022年8号 イラク・シーア派民兵によるトルコ軍への攻撃
2022年7月20日、イラク北部のドホーク県で起こったトルコ軍の砲撃により、民間人9名が死亡、33名が負傷したと報じられた。これを受けてイラクでは、政府によるトルコへの批判、また市民によるデモが見られ、一方のトルコ政府は、砲撃は民間人を標的にしておらず、クルディスタン労働者党(PKK、トルコと対立)のバイアスがかかった報道がなされていると反論した。こうした中、22日にシーア派民兵組織「血の守護者団」がトルコ軍への攻撃声明を出した。トルコによるイラク北部での軍事展開自体は新しくないものの、これに対してシーア派民兵が非難声明の発出以上の行動を起こすことは稀である。本稿ではこの点に注目し、今般のシーア派民兵による反撃がどのような意味を持っていたのかについて、2022年以降のイラクにおけるイスラーム過激派全体の動向を俯瞰しつつ検証する。
【目次】
1. 米軍撤退後のイスラーム過激派:声明一覧、シーア派民兵とISの「役割分担」
2. シーア派民兵によるトルコへの対応:攻撃主体とイスラエルへの言及
3. 結論:攻撃対象として「値上がり」したトルコ