中東情報分析

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2020年8号 「イスラーム国」と犠牲祭

No.M20-08 2020年8号 「イスラーム国」と犠牲祭

 イスラーム諸国は2020年7月30日夜、犠牲祭(イード・アドハー)を迎えた。犠牲祭は、ラマダーン月明けの祭り(イード・フィトル)と並ぶイスラーム暦の祭日で、イブラーヒーム(アブラハム)が息子イスマーイール(イシュマエル)を神に捧げようとしたことにちなみ、供儀として家庭で羊や山羊を屠殺し、これを近隣住人や貧者に分け与えること等が慣例となっている。また犠牲祭から4日間は多くのイスラーム諸国で休日となり、買い物客や旅行客によって都市や観光地が賑わいを見せるのが通常である。
 一方、イスラーム過激諸派にとって、こうした宗教的背景を伴う出来事は信仰心の発露を大義名分とする武装行動の好機ともなってきた。ただし、「平時よりも多くの功徳が宗教実践によってもたらされる」と言われるラマダーン月と比べ、犠牲祭にはこれにあわせて武装行動に勤しむべきだと人々を思い至らせる教義的な根拠に乏しい。このため、犠牲祭に際しての過激諸派による武装行動の動機付けは必ずしも一様でなく、しばしば曖昧である。本稿では過激諸派、とりわけ「イスラーム国」が犠牲祭をどのような機会と位置づけてきたのかについて、過去10年間の声明を通して同派の盛衰とともに検討したい。


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