『中東研究』第521号発行のお知らせ
*『中東研究』最新号第521号(2014年度 Vol.Ⅱ)が9月25日に発行されました!
【特集: 選挙と民主化の逆行】 | |
2014年アルジェリア大統領選挙――政軍関係の変化と先送りされた政治課題 | 私市 正年 |
アサド大統領再選がシリアの紛争において持つ含意 | 青山 弘之 |
一極化と分極化の狭間で――第3回イラク国会選挙の分析 |
山尾 大 |
アフガニスタン大統領選挙――カルザイ大統領の政治闘争の 視点から | 梅山 英一 |
2014年エジプト大統領選挙――スィースィーの「圧倒的勝利」が意味すること |
金谷 美紗 |
【焦点: 湾岸産油国の統治体制と社会】 | |
湾岸アラブ諸国の権威主義体制とエスノクラシー・モデル | 松尾 昌樹 |
【焦点: 中東における政治変動とイスラーム主義】 | |
公正発展党との非対称な対立にみるギュレン運動の変動 | |
――2010年代トルコの政治情勢の一考察 | 幸加木 文 |
【書評】 | |
The Good Spy: The Life and Death of Robert Ames | |
(Kai Bird著) | 小早川 敏彦 |
本号では「選挙と民主化の逆行」と 題する特集を組んでおります。2011年に「アラブの春」の風が吹き荒れた際には、中東にもようやく民主化の「波」が訪れたのだと盛んに喧伝されました。しかし、2014年に中東各国で行われた選挙を見ますと、当時思い描いたものとは大きく異なり、民主化が進むどころか、むしろ逆行するような現象が見られます。アルジェリアでは軍特権集団の情報治安部局(DRS)の支持を受けたブーテフリカ大統領が4期目の当選を果たし、政治改革が先延ばしにされました(私市論文)。また、紛争下のシリアでは、憲法改正にまで及ぶ制度改編が行われ、大統領選挙も実施されたものの、アサド政権以外の有力な選択肢を欠く状況が続いています(青山論文)。イラクでは国会選挙が行われ、現職のマーリキー首相率いる法治国家同盟が相対的に勝利したものの、選挙後には選挙結果を無意味にしかねない「多数派形成ゲーム」が繰り広げられました(山尾論文)。アフガニスタンではカルザイ大統領を権力の座から引きおろすべく大統領選挙が実施されましたが、新政権の陣容は大統領選挙候補者間の利権配分に収まりました(梅山論文)。そしてエジプトでは、スィースィーが「圧倒的勝利」によって大統領に当選したものの、弾圧されたムスリム同胞団の支持者を始め選挙をボイコットした者も少なくないという事情が指摘されています(金谷論文)。
また、松尾論文では、指導者を選出するための選挙を有さない湾岸産油国において、政治体制の柔靭性を高めるため、国民と移民との格差を意図的に生成・維持する「湾岸アラブ型エスノクラシー」と呼びうる統治形態が確立されつつあることが指摘されています。幸加木論文では、トルコにおいてエルドアン・公正発展党の主要な「政敵」として近年、注目が集まっている、イスラーム信仰に基づく市民社会運動であるギュレン運動の活動とその変遷に着目しています。また、「米国のロレンス」と呼ばれたCIAの秘密諜報官Robert Amesの生涯を描いたThe Good Spy: The Life and Death of Robert Amesを紹介する小早川書評も掲載されています。
是非お買い求めいただければ幸甚です。
定価:(本体2,000円+税) 送料別途 160円
※『中東研究』は紙版の他、セキュリティ付きのPDFファイルによるCD/DVD版も販売しております。