№61 クウェイト:戦時の暮らしの常態化
- NEW2026湾岸・アラビア半島地域クウェイト
- 公開日:2026/07/22
クウェイトは連日イランからの攻撃を受け、攻撃の一部は発電所や海水淡水化施設に及んでいる。2026年7月20日付『ナハール』紙(レバノンのキリスト教徒資本の日刊紙)は、「戦時下のクウェイト・・・日常生活はどう変わったか」と題し、要旨以下の通り報じた。
*クウェイトはイランとアメリカとの衝突の直接の当事者ではないにもかかわらず、地理的な立地、作戦区域との近接、防衛協定に基づくアメリカ軍の駐留によって、軍事的な展開の大きな影響を受けている。
*7月19日の午前は、各種教育機関での試験中に空襲警報が発令される異例の光景が生じた。事前に策定された計画に基づく退避が実行され、生徒・学生は危険が去った後教室に戻った。
*当局は、気温の大幅な上昇によって送電網に大きな圧力がかかる中、電力消費抑制キャンペーンを続けている。戦時下で生活の中に安全上の措置が織り込まれるようになったにもかかわらず、クウェイト人たちは普段通りの日常生活を送っている。イランからのミサイル・無人機を迎撃する爆発音が繰り返し聞こえるようになったが、クウェイト空港は空襲警報発令に空港を一時閉鎖しつつ、航空便運航を継続する計画を実施している。
*商業施設は活況を呈しているが、それは軍事的緊張の中でも日常生活の様式を保持しようという人々の気持ちを反映している。政治解説者は、国内の情勢は落ち着いており、国民も在留外国人も最新情勢に対処する上で高い意識を示していると指摘した。それによると、彼らは空襲警報にも慣れ、冷静に対処するようになった。このような意識は、節電キャンペーン、風説の流布の回避、機微な場所の撮影回避のような公的な通知の遵守に示されている。
*ホルムズ海峡の封鎖は、クウェイトや湾岸諸国にとって更なる課題となっている。ホルムズ海峡での緊張が高まることは、石油輸出、石油収入、さらなる経済的問題の発生につながる。
評価
今般の記事は、連日イランからの攻撃が続く中でクウェイト在住者が落ち着いて対応していることを強調する内容だ。そのため、燃料・電力・食糧・水道水の供給、航空便運行状況などについての具体的な数値を欠いている。2026年2月末のアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃開始当初、イランからの航空攻撃の迎撃情報やミサイル・無人機の着弾状況、破片の落下、火災の発生などは、かなり具体的に撮影されSNSなどで拡散されていた。しかし、最近ではこれらの情報は非常に少なくなっており、クウェイトが受ける被害についての情報は衛星写真や断片的な火災発生情報に限られるようになった。これは、上記の記事によれば在住者の「高い意識」のたまものであるが、ここまでに至る過程で被害状況を撮影・投稿した者の追跡・特定・取り調べや訴追についての報道も見られたことから、当局による指導や情報統制が相当程度行き届いていることを示している。
ペルシャ湾の最も奥に位置すること、ホルムズ海峡通行を避ける即効性の高い代替手段がほとんどないことに鑑みると、戦闘が拡大・長期化した場合にクウェイトが被る影響は、軍事・石油施設への被害、石油収入の喪失のみならず、海外からの食糧や物資の調達、国外との往来など多岐にわたる。緊張の長期化は、クウェイトの政治体制や社会の強靭さへの試練となるだろう。
(特任研究員 髙岡 豊)
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