中東かわら版

№38 イラン:米軍との間で2日連続の軍事衝突

 イラン時間6月11日未明(日本時間午前6時頃)、米中央軍(CENTCOM)はトランプ大統領の指令により、イランの複数の標的に対して「自衛のための」攻撃を行ったと発表した。イラン国内の報道によると、イラン南部ホルムズ海峡に近いミーナーブやシーリーク、バンダルアッバース西部、ゲシュム島、さらにはテヘラン西部メフラーバード空港付近やキャラジなどの内陸部でも爆発音があった。

 これに対し、イラン正規軍は、バハレーンにある米軍第5艦隊に対して、ドローンによる波状攻撃を実施し、通信アンテナやパトリオット・システムのレーダー施設を攻撃したと発表した。また、革命防衛隊のニュースサイト「セパー・ニューズ」も、「2波によるオペレーション」で、クウェイトにあるアリー・アル・サーレム空軍基地とアフマド・アル・ジャービル空軍基地、及びバハレーンにあるシャイフ・イーサー空軍基地にある、18カ所の米軍関連標的を攻撃し破壊したと伝えた。さらに革命防衛隊は、同航空宇宙軍が11日朝、12発の弾道ミサイルによって、ヨルダン・アズラクにある米軍のF16、F15、及びF35戦闘機の駐機場を攻撃し、多くの戦闘機を破壊したと発表した。

 また、米国・イスラエルとの戦争の指揮を取るハータモル・アンビヤー中央基地は声明で、「これより、地域の不安定化を理由に、あらゆる船舶の通航に対し、ホルムズ海峡は閉鎖される。いかなる通航も、(ミサイルないしドローン攻撃の)標的となるだろう」と発表し、革命防衛隊海軍も、米軍の地域における最近の「悪事」を受け、「ペルシア湾及びオマーン海にあるあらゆるタンカーや商船に対し、今後ホルムズ海峡は完全に封鎖され、同海峡における船舶のいかなる通航にも断固とした対応が取られることを表明する」、「自身の安全のために、追って通知があるまで、ホルムズ海峡の通航は厳に慎まれたい」と発表するなど、ホルムズ海峡の状況も悪化の一途を辿っている。革命防衛隊海軍の発表によると、5月20日から6月2日までの約2週間で、296隻の船舶の通航が許可されたが、今回の声明により、ホルムズ海峡は再び封鎖された模様である。事実、革命防衛隊に近い「ファールス」通信は、革命防衛隊海軍がホルムズ海峡の「遺法な通航」を試みた船舶2隻を攻撃したと報じている。

評価 

 米軍とイラン軍の交戦は2日連続である。トランプ米大統領は、「イランからの直接の連絡」で攻撃の停止が要請されたことを受け、イランへの新たな攻撃を停止するよう命じたと発言しているが、革命防衛隊の公式ニュースサイト「セパー・ニューズ」はこれを否定している。同大統領はFOXニューズとのインタビューで、イランが米国の提案に同意しない場合、「再度爆撃が行われる」と警告する一方、革命防衛隊に近い「タスニーム」通信も、「イランは、米国の軍事的侵略に対して、断固たる軍事的応答を行う」と応じている。今回の米軍による攻撃は、ホルムズ海峡の沿岸部分だけでなく、「テヘランから数キロの距離の地点」(Foxニューズの報道)に対しても行っており、両国の間で本格的な戦争に発展する危険性が高まっているように思われる。

 ペゼシュキヤーン大統領は昨10日、故アリー・ハーメネイー前最高指導者に関する記念行事で演説し、イラン国営放送は故アリー・ハーメネイー前最高指導者が交渉に反対していたとしばしば報じているが、実際には同師は自身との協議の中で「戦争でも平和でもない」状態を解決する必要性を述べていたと指摘し、米国との和平の実現によって、イランが現在直面する苦境を脱する必要性を強調していた。和平実現に向けた政権側のこうした努力も、今回の衝突の再発によって振り出しに戻ったかもしない。

【参考】

イラン:イスラエルとの停戦を発表」『中東かわら版』No.34。

(研究主幹 斎藤 正道)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP