中東かわら版

№31 イラン:イスラエルに対して弾道ミサイル攻撃を実施

 イラン時間6月7日夜(日本時間8日未明)、イラン革命防衛隊はイスラエルのラマト・ダヴィド空軍基地に対して弾道ミサイルによる攻撃を行ったと発表した。イスラエル軍の発表によると、これらのミサイル攻撃は迎撃されたという。

 イスラエル軍はイラン時間8日午前、報復としてイラン西部及び中央部にある軍事基地に対して攻撃したと発表した。報道によると、テヘラン、キャラジ、エスファハーン、ナジャフアーバード、タブリーズ、オルーミーイェ、コルデスターン州ゴルヴェなどで爆発音が聞こえたという。

評価 

 革命防衛隊は、イスラエルがベイルートのダーヒヤ地区をはじめ、レバノン南部への攻撃を強めていることを受け、「もっぱら警告」として、この攻撃の起点となっているラマト・ダヴィド空軍基地を攻撃したとし、もし同国による侵略行為が繰り返されるならば、イランの応答はより広範囲に拡大され、地域における米国・イスラエルのすべての標的が攻撃の対象となるだろうとの声明を発表している。

米国・イスラエルとの戦闘の立案を行っている「ハータモル・アンビヤー中央基地」の報道官も、イスラエル軍がレバノン南部への攻撃を停止しなければ、イランによる「破壊的な攻撃」が開始されるだろうと警告しており、イスラエルによる反撃により、イランと米国・イスラエル間の本格的な戦闘が再開される危険性が高まっている。

 イランがイスラエルへの攻撃に踏み切った背景には、イランが1980年代から育ててきたレバノン・ヒズブッラーへのイスラエルの攻撃を無視して米国との和平協議を進めることは、「抵抗戦線」の指導的立場にある「イスラーム共和国」の国内外における威信を傷つけることになるという懸念がある。革命防衛隊の声明を掲載した、同隊に近いとされるイランの『ファールス』通信の記事のコメント欄には、「よくやった」「米国の海上封鎖を打破するチャンス」などの好戦論も書き込まれており、同隊も体制の岩盤支持層である一部の強硬派の人々の感情に配慮して、イスラエルへの攻撃を実施せざるを得なかったものと思われる。「警告ってどういうこと?」と革命防衛隊の(煮えきらない)姿勢に疑問を呈するコメントもあり、イスラエルのイランへの反撃に対して断固たる対応を取るべきとの声がイラン国内で高まる可能性もあるだろう。

 トランプ米大統領はイスラエルによるイランへの反撃の前、米メディア『Axios』とのインタビューで、イスラエルのネタニヤフ首相に対してイランへの報復攻撃を思いとどまるよう要請するつもりだと述べ、またイスラエルの『チャンネル12』とのインタビューでも、「イランによる攻撃では誰も被害を受けなかった。双方とも、自分たちの仕事をした。イスラエルが(レバノンを)攻撃し、イランも(イスラエルを)攻撃した。我々は別の攻撃を必要としていない」と述べて、イスラエルによる対イラン攻撃を牽制していた。同大統領はさらに、英国『フィナンシャル・タイムズ』とのインタビューで、「ネタニヤフに選択肢は一切ない。決定を下すのは私だ。すべての決定は私が下す。彼(ネタニヤフ)は意思決定者ではない」と述べて、ネタニヤフ首相に対して警告とも取れるような発言を行っている。

 イスラエルは、トランプ大統領のこうした発言を無視する形で対イラン攻撃を行ったことになる。イスラエルの反撃を受けて、イランも(少なくとも形だけの)攻撃をイスラエルに対して行わざるを得ないことが予想されるが、イラン・イスラエル間の紛争がエスカレートして戦争が再燃するのか、それともイラン・米国間の和平協議が再開されるかどうかは、米国にイスラエルを抑制する真剣な意思があるかどうかにかかっているように思われる。

【参考】

イスラエル:イランが「停戦合意」に違反してミサイルを発射」『中東かわら版』No.30。

(研究主幹 斎藤 正道)

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