中東かわら版

№25 イラン:米軍がイラン南部バンダルアッバースにある地上管制センターを攻撃

 5月28日、革命防衛隊広報は、同日朝にバンダルアッバース空港付近で発生した米軍の飛翔体による侵略行為を受け、(イラン時間)4時50分に同侵略行為の起点となった米空軍基地を攻撃したと発表した。革命防衛隊は、今回の「応答」は侵略行為が無反応で済まされることはなく、繰り返されるならばイラン軍からの応答もより毅然たるものになるということについての、敵への「真剣な警告」だと指摘している。

 革命防衛隊は、自身が攻撃した米軍基地がどこなのかは明らかにしていないが、クウェイト軍が同国の防空システムによってミサイル・ドローン攻撃が迎撃されたと発表しており、革命防衛隊による報復はクウェイトにある米軍基地に対して行われたものと思われる。クウェイト軍は、この攻撃がどこから行われたものであるのかについて明らかにしていない。

 米中央軍(CENTCOM)は、米軍がイランの自爆ドローン4機をホルムズ海峡付近で撃墜し、5機目のドローンを飛ばそうとしていたイラン南部バンダルアッバースにある地上管制センター1カ所を攻撃したと発表していた。CENTCOMはこの攻撃を、「専ら自衛」によるものであり、「停戦を維持する目的で」行われたと表明している。

評価 

 米軍は26日にも、「自衛権の行使」としてイラン南部のミサイル施設及び機雷敷設用の船舶を攻撃したと発表している。イラン外務省はこれを「侵略行為」であり、「明確な停戦違反」だとして「強く非難」する声明を出しているが、米国との和平協議の中止を表明するものではなかった。

 今回の革命防衛隊の声明も、米国により激しい反撃を警告する内容であり、停戦の破棄はおろか、協議の中断を主張するものとはなっておらず、こうした軍事衝突にもかかわらず、イラン・米国間で和平協議が今後も継続される可能性も依然として残っている。

 他方、この声明を掲載した、革命防衛隊に近いとされる「ファールス」通信のネット記事のコメント欄には、革命防衛隊に対して辛辣な意見も見える。同隊の反撃に対して、「非常に小規模で非常に遅いものではあったが、屈辱的な沈黙よりはマシ」といった一定の評価がある一方、「あなた方は米国を恐れている。あなた方は現世、そして『シムルの安全通行証』を選んだ。(しかし米国は)20回も停戦違反を犯している‥‥これほどまでに卑しい存在に堕すことのないよう、我々がヤマーニーの人々であったなら」といった非難の声も挙がっている。

 「シムルの安全通行証」とは、西暦680年に第3代イマーム・ホセインの一族郎党を取り囲んだウマイヤ朝軍の幹部シムルが、ホセイン一族を分断することを目的に彼の異母兄弟アッバースに対して提案したとされる通行証のことであり、また「ヤマーニー」とは終末のときに救世主イマーム・マフディーのためにイエメンで蜂起し、人々をシーア派の信仰に導くとされる人物である。「シムルの通行証を選ぶ」とは「敵の甘言に騙され、イマーム(・ホセイン)を裏切る」、「ヤマーニーの人々となる」とは「イマーム・マフディーの味方となって敵と戦う」くらいの意味であろう。要するに、このコメントは、革命防衛隊が敵である米国に恐れをなし、彼ら誘いの声に乗っかり、イマーム(指導者)たるモジタバー・ハーメネイー最高指導者に背を向けているという非難の声であり、米国・イスラエルとの徹底抗戦を呼びかける主張と言える。

 こうしたラディカル(極端かつ根本的)な意見がどれくらい革命防衛隊内あるいはその支持者たちの間での共通認識になっているのかは分からないが、政権や軍が国の一部に確実に存在するこうした意見を無視して、米国との和平合意に突き進むことは困難であろう。イランが様々な経済的困難にもかかわらず、「戦争でも平和でもない」状態を続けている背景には、こうした事情もあると考えられる。折しも、イランでは5月26日からインターネット接続が復活している。主戦論を唱える「ラディカルな意見」がネット上にあふれる可能性もあり、政権も軍も米国との和平合意に対して慎重に動くことを余儀なくされるだろう。

【参考】

イラン:ガーリーバーフ国会議長を団長とする高官団がカタルを訪問」『中東かわら版』No.23。

(研究主幹 斎藤 正道)

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