中東かわら版

№76 アルジェリア:UAEと外交関係を断絶

 2026年9月10日、アルジェリアの外務省は、アラブ首長国連邦(UAE)による挑発的、または敵対的な行動が増加していることを受け、アルジェリア政府は、UAEとの外交関係を断絶することを決定したとの声明を発表した。

 同日、アルジェリア国防省は、9月11日から、民間機、軍用機、また往路、復路を問わず、UAEに登録されているすべての航空機に対し領空を閉鎖するとの声明を発表した。ただし、ウアリ・ブーメディエン国際空港を発着するUAEの民間商業便に関しては、契約満了となる2026年末まで運航が継続されるとした。

 これに先立つ9日、アルジェリア・メディアの『APS』は、「UAE…地域の危機と紛争に火を点けるオーケストラ指揮者」との題名の記事を掲載した。同記事では、英国紙「ミドル・イースト・アイ」を引用する形で、UAEがイエメンやスーダンだけでなく複数の国で危機や紛争を扇動していることや、同国がガザ地区でイスラエルによるジェノサイドが行われる中、イスラエルと「同盟」を結んだことを指摘していた。

 アルジェリアとUAEの関係をめぐっては、2026年2月、2013年5月に署名された二国間の航空サービス協定について、アルジェリアが破棄に向けた手続きを開始している。

(グーグルマップを元に筆者作成。赤線:本文で取り上げた、UAEの影響力が及ぶ周辺地域との国境)

評価

 今般の国交断絶に関して、アルジェリア政府は「挑発的、または敵対的な行動」があったとする以外、その具体的な理由を明らかにしていない。一方、『APS』は、UAEが地域の危機や紛争を扇動しているとの批判を展開している。こうした報道からは、UAEが進める地域政策がアルジェリアの安全保障上の利益を脅かしているとの認識が、今回の断交の背景にあった可能性がうかがえる。

 海外の主要メディアの分析も、概ねこの見解で一致している。例えば、『アル・モニター』は、今般の国交断絶の背景として、UAEが近年、サヘル諸国との協力を深めていることを指摘している。アルジェリアの南部国境は、サヘル諸国に含まれるマリとニジェールと接しており、その距離は2300kmを超えている。そのため、両国の安定と良好な関係の維持は、アルジェリアの安全保障にとって極めて重要である。またUAEとアルジェリアは、モロッコ、西サハラ、イスラエルとの関係をはじめ、多くの地域問題で異なる立場を取ってきた。リビアに関しても、アルジェリアが国連主導の政治プロセスを支持したのに対し、UAEは東部のハフタル勢力を支援していた過去がある。こうしたなか、UAEがアルジェリアにとって重要な安全保障圏であるサヘル諸国との関係を強化していることが、アルジェリア側に自国の安全保障上の利益を脅かす動きとして捉えられた可能性がある。なお、アルジェリアはリビアとも982km、モロッコとも約1,560kmにわたって国境を接している。

 UAEと地域諸国との関係に加えて、『アフリカニュース』は、アルジェリアで発生した山火事をめぐる報道も、今般の国交断絶の背景にあったとするアルジェ第3大学教授の指摘を掲載した。アルジェリアでは8月下旬、大規模な山火事が相次いで発生し、多くの国民が被害を受けた。同教授は、UAEがこの山火事について「非友好的な関係を反映した」メディア・キャンペーンを展開したと指摘している。同教授の見方に従えば、両国関係がすでに悪化するなか、山火事をめぐるこうした報道がアルジェリア側の反発をさらに強め、国交断絶を決断する一因となった可能性がある。

 断絶の理由に関しては推測の域を出ない一方、アルジェリアが断交に踏み切った事実は見逃すことができない。2025年9月に公表されたIMFの資料によれば、2024年のアルジェリアの対外債務はGDP比1.1%と極めて低い。また、2024年末時点の二国間での中長期借入を相手国別に見ると、中国が49.4%を占める一方、アラブ諸国ではサウジアラビアの0.8%が最大となっている。こうした経済構造から、アルジェリアはUAEからの資金供給への依存度が低く、UAEとの関係悪化によって受ける金融面での制約も比較的小さいと考えられる。これは、湾岸諸国を除くアラブ諸国の中では比較的珍しい特徴である。例えばエジプトは、2025年6月末時点でUAEに117億ドルの対外債務を抱えるほか、UAEから巨額の投資を受けている。こうしたUAEへの経済的依存の低さが、アルジェリアに断交という外交的選択を取り得る余地を与えたとみられる。

 断交の理由が何であれ、UAEがサヘル諸国との政治・安全保障面での関係を深めていることは事実である。アルジェリアとしても、ニジェールやマリとの関係を強化することで、自国にとって重要な安全保障圏であるサヘル地域における影響力を維持・強化していくとみられる。実際、8月下旬には、ニジェールの首相が閣僚級代表団を率いてアルジェリアを訪問したほか、アルジェリアはニジェール政府の要請を受けて戦闘機を同国に派遣するなど、安全保障面での協力を急速に深めている。また7月には、約1年間にわたり関係が悪化していたマリとの関係改善にも動き、大使を復帰させたほか、マリ発着の国際便を含むすべての航空便に対して領空を再開した。今後、サヘル地域では、UAEとアルジェリアがそれぞれ地域諸国との関係を強化し、両国の影響力が競合する場面が増える可能性がある。

(主任研究員 平 寛多朗)

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