№65 イエメン:アンサール・アッラーがサウジ船舶への攻撃範囲拡大を表明
- NEW2026イエメン湾岸・アラビア半島地域
- 公開日:2026/08/06
2026年8月5日と6日、イエメン軍(アンサール・アッラー(蔑称:フーシー、フーシなど)側)は声明を発表し、紅海北部でサウジのタンカー「ワファー」を、アデン湾で同じく「Daisy」を攻撃したと発表した。これは、7月22日に同派が宣言したサウジに対する封鎖の一環であり、5日の声明によればこれまでに紅海とアラビア海で29隻のサウジのタンカーの進路を変更させることに成功した。また、5日の声明はサウジがタンカーの航路を紅海の北へ(注:スエズ運河経由と思われる)に変更したことに鑑み、紅海北部でのサウジのタンカーへの封鎖を継続・強化すると宣言した。
評価
イエメン軍(アンサール・アッラー側)の軍事力に鑑みれば、紅海やバーブ・マンダブ海峡でのサウジに対する封鎖が完全なものになるとは考えにくい。また、7月末にはサウジが主導して当該海域での航行の安全のための「国際連合軍」の編成が宣言されたが、これも現時点では結成宣言段階であり船舶警備や攻撃阻止のための具体的な作戦行動はとられていない。今般のアンサール・アッラーの攻撃強化宣言が、直ちに封鎖の強度を上げたり、当事者間の大規模な交戦に発展したりするとは限らない。
アンサール・アッラーは2023年以来度々イスラエル関係船舶の紅海とバーブ・マンダブ海峡通行を禁じ、これに対するイスラエル、アメリカ・イギリスによる対イエメン攻撃が繰り返されてきた。しかし、同派による海上交通の妨害を根絶することはできておらず、これを達成するには陸上での攻撃策源地の制圧、あるいはなにがしかの政治解決を通じた攻撃防止策が不可欠である。だが、これまで講じられた対策のいずれでも、イエメンでの地上作戦やイエメン紛争の政治解決は視野に入っていない。しかも、今般のサウジに対する紅海とバーブ・マンダブ海峡封鎖の動きはアメリカ・イスラエルとイランとの紛争とも結びついており、紅海とバーブ・マンダブ海峡の局地的問題に収まり切れないものである。
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃とそれに伴うホルムズ海峡の封鎖以降、サウジはペルシャ湾岸で産出した原油をパイプラインによって紅海沿岸に輸送し、そこから「代替」経路を通じて原油を輸出することで損失の軽減を図ってきた。紅海とバーブ・マンダブ海峡の封鎖は、この「代替」の有効性を損なうものであり、その影響を受けるのはサウジだけでなく、「代替」経路を通じて原油や燃料の輸出や供給に関わる全当事者である。
(特任研究員 髙岡 豊)
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