中東かわら版

№63 アルジェリア:国民議会選挙の結果と無所属議員の激減

 2026年7月2日、国民議会(定数407)の選挙が行われた。7月25日付けの官報には、憲法裁判所が確定した投票結果と、政党・自由名簿別の獲得議席数が掲載された。以下は、投票者数、投票率および党派別獲得議席数である。 

(1)投票総数など

国内有権者登録数

(海外)

23,872,756

(854,285)

国内投票者数

(海外)

5,071,020
(91,810)

国内無効票

(海外)

959,689

(12,630)

国内投票率

(海外)

21.24%

(10.75%)

(出所)官報及び選挙管理委員会のHP等をもとに筆者作成。 

(2)各党の議席数

政党名

議席数

前回の議席数

民族解放戦線

91

98

国民民主連合

74

58

未来戦線

56

48

平和社会運動

43

65

国民建設運動

40

39

無所属(※自由名簿を筆者合算)

33

84

人民の声

16

3

社会主義勢力戦線

12

新夜明け

6

2

自由正義

6

2

尊厳

5

1

正義・発展戦線

4

2

文化・民主主義のための連合

4

アルジェリアの希望連合

3

労働者

3

新世代

3

1

ナフダ運動

2

新アルジェリア戦線

1

1

共和国国民同盟

1

正道統治戦線

1

2

自由国民戦線

1

アルジェリア革新

1

国民統一・発展

1

 (出所)官報等をもとに筆者作成。

 選挙は、阻止条項を5%とする非拘束名簿式により国内69選挙区(国外8選挙区)で争われた。選挙に先立つ6月6日、アルジェリアの『Shuruq』紙は、選挙管理委員会による候補者資格審査の結果、立候補を拒否された者が3000人を超えたと報じた。

 また、6月14日付の『Shuruq』紙によれば、提出された144件の無所属に該当する自由名簿のうち131件が承認された。承認数としては最多であったが、前回の837件から大幅に減少した。なお、政党別では、民族解放戦線と未来戦線がそれぞれ74件で最多だった。

評価

 今般の選挙結果の特徴の一つは、無所属候補による自由名簿の獲得議席が大幅に減少したことである。これは、無所属候補に対する支持が急落した結果というよりも、2021年選挙において無所属候補を多数当選させた、自由名簿の乱立と票の分散という条件が弱まった結果とみる方が妥当である。

 前回の2021年国民議会選挙は、ブーテフリカ前大統領の5期目出馬への反対を契機として広がったヒラーク運動後、初めて実施された議会選挙であった。タブーン大統領は「新しいアルジェリア」を掲げ、40歳未満無所属候補の政治参加を促す方針を取った。そのようなことが影響し、2021年の選挙では800を超える自由名簿が承認された。一方で、政府の対応は不十分であるとして選挙をボイコットする動きが見られた。その結果、低投票率の中で阻止条項である5%を超えた自由名簿から無所属候補が多数当選するという状況が生まれた。極端な例では、アルジェリア北東部のベジャイアでは投票率が0.42%の中、413票を獲得した自由名簿によって3名の無所属候補が当選した。当時ベジャイアで登録されていた有権者数は54万2256名であり、同選挙区には9議席が割り当てられていた。同様の現象はティジ・ウズーでも見られ、0.9%の投票率の中、4名の無所属候補が当選している。

 今般の選挙では、選挙基本法第200条に規定された、不正資金や疑わしい事業関係者との関係などを理由として、選挙管理委員会が多数の候補者の立候補を拒否した。これは選挙の公正性・透明性の確保のための措置であるが、候補者が拒否された名簿は、短期間のうちに代替候補を確保する必要に迫られた。政党に比べて資金・人材面で制約の大きい自由名簿にとっては、名簿を構成するのに必要な人数をそろえる負担は大きく、それが自由名簿の提出数が大幅に減少した一因になったとみられる。その結果、2021年選挙で見られた自由名簿の乱立と、それに伴う票の分散は大幅に抑えられた。さらに、2021年選挙をボイコットした一部野党が今般の選挙に復帰したことで、自由名簿や小規模勢力に分散していた票が主要政党に集中しやすい環境が形成された。

 候補者資格審査によって多数の候補者が立候補を拒否されたことは、違法資金や汚職に関与した人物を政治の場から排除する効果を持つ一方、審査が恣意的に運用されれば、体制側にとって不都合な人物を選挙から排除する手段となる懸念もある。実際、今般の選挙をめぐっては立候補を拒否する際の基準が曖昧であると、『Shuruq』等で報じられていた。

 民族解放戦線を中心に国民民主連合、未来戦線、国民建設運動、人民の声といった諸政党は、2024年の大統領選挙でタブーン大統領を支持した。今般の選挙におけるこれらの政党の獲得議席は合計277議席に上り、国民議会の過半数を大幅に上回った。投票率は21%にとどまったものの、今般の選挙により、議会ではタブーン大統領の路線を支持する政治基盤が維持されることとなった。他方、今般の選挙により、無所属候補の立候補が難しくなり、既存の大政党に有利な構図が生じたことは、議会を通じて大統領の路線に異論を表明する余地が狭められたことも意味する。

(主任研究員 平 寛多朗)

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