№57 イラン:米軍がイランを3夜連続で攻撃
- NEW2026イラン湾岸・アラビア半島地域
- 公開日:2026/07/14
米中央軍(CENTCOM)は、米東部時間7月13日午後4時45分(イラン現地時間7月14日0時15分)に、トランプ米大統領の命令により、3夜連続でイランに対する攻撃を実施したと発表した。米軍の攻撃は、ペルシア湾からオマーン海のイラン沿岸部分が中心だが、マルキャズィー州やケルマーン州など内陸部にある施設への攻撃も行われた模様である。
米軍の対イラン攻撃に対し、イラン側もヨルダン、クウェイト、バハレーン、カタル、そしてオマーンへの攻撃を行ったことを発表しており、イランと米国の仲裁国であるカタルやオマーンもこの攻撃を強く非難している。
CENTCOMはまた、米東部時間7月14日午後4時(イラン時間14日午後11時半)から、イランに対する海上封鎖を再開するとも発表した。この海上封鎖は、イランの港湾を行き来する船舶に対するものだという。CENTCOMは、この封鎖に関係しないその他の船舶の地域における航行を支援すると表明しているが、トランプ米大統領はSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、20%の通航料を徴収する考えを示している。
これに対し、イランのハータモル・アンビヤー中央基地の報道官は、「ホルムズ海峡の管理に対する米国の介入は断固として容認しない」との声明を発表した。アラーグチー外相も、ホルムズ海峡の安全な航行に対してサービス料を受け取る意向を示した「米大統領は完全に正しい」としつつ、「20%はあまりに高すぎる。我々なら公正に対処する」と皮肉っている。これに先立ち、革命防衛隊は、ホルムズ海峡は「追って通知があるまで、また米国による介入が終わるまで」封鎖され、いかなる船舶も同海峡を通航することはできないとする声明を発表していた。
評価
12日未明から3日連続して行われた米国による対イラン攻撃のきっかけは、ホルムズ海峡を通航中のキプロス船籍のコンテナ船「M/V GFS Galaxy」に対して、イランによる攻撃があったことだ。
革命防衛隊は声明で、米国がオマーンに対して自らの意思を強要し、数隻の船舶にホルムズ海峡南部の違法な航路を通過するようけしかけたことに対して、同海軍がこの試みを阻止したと発表しており、(先週6日から7日にかけて起きたタンカー攻撃とは異なり)コンテナ船に対する攻撃への関与を認めている。
革命防衛隊が商船への攻撃を行ったとき、イランのアラーグチー外相はオマーンを訪問し、同国のブーサイーディー外相とホルムズ海峡の管理について話し合っていたことが分かっている。「AXIOS」のラビッド記者は、外交筋の話として、オマーン側がアラーグチー外相との協議で、ホルムズ海峡の南側の航路を開放し、戦争前と同様の状態にすることを提案したと伝えており、革命防衛隊による船舶攻撃がイラン・オマーン間の協議に介入し、米国との緊張を激化させ、最終的にはイランによるホルムズ海峡の支配を確立させたいという革命防衛隊の意思の現れとみることができるだろう。真偽は不明なるも、トランプ米大統領も11日にイランと米国の間で合意に近づいたものの、イランが突如として1隻の船舶に対してドローン攻撃を行い、合意がご破算になったと述べており、革命防衛隊がイランと米国の和平協議の妨害を試みているように思われる(6日から7日にかけてのタンカー攻撃についても、10日付の米CBSの報道は、イラン当局がトランプ米大統領の顧問らとの私的な会話において、同攻撃はイランと米国の交渉を弱体化させることを目的に、一部の強硬派が起こしたものだと述べたとの米高官の話を伝えている)。
革命防衛隊の強硬姿勢が強まっている背景には、9日付のモジタバー・ハーメネイー最高指導者の声明がある。この声明は、父アリー・ハーメネイー前最高指導者をはじめとする、2025年6月からの2度の戦争の「殉教者たち」の「血の復讐」を誓う内容で、2日後の11日に最高指導者事務所のウェブページに掲載された。この声明発表を受け、12日付の強硬派の国内各紙は、「血の復讐」、「復讐は我らが国民の望み」、「復讐は絶対」などのタイトルを一面に載せ、米国との対決ムードが一挙に高まった。1979年革命の指導者の故ホメイニー師の孫であるアリー・ホメイニー師がゴムで11日に開かれたモジタバー師主催のハーメネイー前最高指導者の葬儀で、「米国と和平を結ぼうとする者は、誰であれ裏切り者」だと非難したことも、対決ムードの醸成に寄与している(なお、この葬儀でも、モジタバー師は姿を現さなかっただけでなく、肉声も発表されなかった)。
トランプ大統領も「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、イランとの協議を継続するが、停戦は終わったと述べており、こうした状況では米国との和平協議の再開は当面不可能であるように思われる。
なお、CENTCOMによる12日の攻撃では、イランの電力施設への攻撃も行われ、イラン電力会社の発表によると、約4200メガワットの電力生産力が失われたという。昨年、イランでは大規模な電力不足が生じ、7日には過去最高の電力消費量として7万400メガワットを記録したことが報じられている。電力需要が高まる夏の季節を迎えた現在、4200メガワットの生産力低下はイランの電力問題に相応の影響を与えることも予想され、米国との対決と海上封鎖はイラン国内の危機をさらに深めるだろう。
【参考】
「イラン:米国が2夜連続でイランを空爆」『中東かわら版』No.55。
(研究主幹 斎藤 正道)
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/







.png)
