№56 イエメン:アンサール・アッラーとサウジが空港攻撃の応酬
- NEW2026イエメン湾岸・アラビア半島地域
- 公開日:2026/07/14
2026年7月13日、イエメン軍(アデン政府側)はサナア国際空港の滑走路を攻撃したと発表した。発表によると、攻撃は同空港へのイランの航空機の着陸を阻止するためのものである。サナア国際空港は2014年以来アンサール・アッラーの制圧下にあり、イランでアリー・ハーメネイ前指導者の葬儀に参列するアンサール・アッラー代表団の往路の移動のためイランの航空機が発着した。これに対し、アデン政府はイエメンの主権侵害とみなし、アンサール・アッラー代表団の復路を妨害するため今般の攻撃に至った。ただし、問題のイランの航空機は、今般の攻撃を受け同じくアンサール・アッラーの制圧下のフダイダの空港に着陸した。
一方、イエメン軍(アンサール・アッラー側)はサナア空港に発着する(した)イランの航空機を人道援助のためのものと発表するとともに、13日のサナア空港への攻撃をサウジによる侵略行為とみなした上で、イエメンと隣接するサウジのアシール州のアブハー国際空港を弾道ミサイル・無人機で攻撃したと発表した。また、イエメン軍(アンサール・アッラー側)は、攻撃についての発表の中ですべての航空会社に対しサナア国際空港への封鎖が解除されない限りサウジ領空を通過しないよう警告した。イエメンとサウジとの間で双方の空港への攻撃が行われるのは、2022年に諸当事者が「沈静化」で合意して以降初めてとみられる。
評価
イエメン紛争や国際場裏でのアデン政府の当事者能力は非常に限られており、軍事的にもイエメン軍(アデン政府側)に対する同政府の統制は名目的に過ぎず、航空戦力もほとんど持っていないと考えられている。このため、アデン政府の公式発表を引用したアラビア語の報道機関を除くと、サナア空港への攻撃はサウジが実施したものとみなされている。現時点で攻撃の応酬はイエメン周辺に限られている。しかし、情勢悪化の契機がイランのアリー・ハーメネイ前指導者の葬儀であり、アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃に伴う広範囲の紛争と連動していることに鑑みれば、今後の展開もイエメン紛争の当事者の枠を超えるものになる可能性がある。サウジやアンサール・アッラーの動向を、アメリカとイランとの「停戦」合意が破綻の淵に瀕する中での情勢激化と連動した軍事行動として観察・分析する必要があろう。
(特任研究員 髙岡 豊)
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