№53 イラン:米中央軍、イラン南部ホルムズ海峡沿岸を空爆
- NEW2026イラン湾岸・アラビア半島地域
- 公開日:2026/07/08
イラン時間7月8日未明、米中央軍(CENTCOM)はイラン南部ホルムズ海峡沿岸に対する空爆を実施したと発表した。イラン・メディアも、バンダルアッバースやシーリーク、ゲシュム島の周辺で複数回、爆発音があったと報じている。
米軍による攻撃は、ホルムズ海峡周辺での3隻のタンカーに対する、イランによるものとされる攻撃への報復だという。英国海運貿易オペレーション(UKMTO)は7月6日から7日にかけて、3隻の商船に対する攻撃があったことを明らかにしていた。それによると、6日に正体不明の飛翔体が一隻のタンカーのエンジンルームに衝突し、火災が発生したという。また、7日にもタンカー2隻が攻撃を受ける事案が発生した。
こうした事案を受け、米財務省はイラン産原油及び石油化学製品の輸出に対する制裁適用の一時停止(ウェイバー)を取り消した。
イランと米国の交渉の仲介役を果たしてきたカタルの外務報道官は、同国のLNG船がイランによる攻撃を受けたとし、イラン政府に対して地域の安全を低下させるような行為を即座に停止するよう求めた。サウジアラビア外務省も声明で、同国のタンカーがホルムズ海峡を通過時にイランから攻撃を受けたとし、国際的な海上交通の安全に対する脅威だと非難した。
これに対し、イランのバガーイー外務報道官は、カタル外務報道官の発言に対し、イランとの調整を経ずに海峡を通航したり、自動船舶識別装置(AIS)の信号を停止して航行したりする行為は、ホルムズ海峡の安全航行を促進しようとするイランの努力を台無しにするものだと反発している。
評価
イラン外務省は、米財務省がウェイバーを取り消したことは6月18日に調印された覚書の第10項に対する明確な違反だと非難する声明を発表した。ガリーブアーバーディー法律・国際問題担当外務次官も「X」への投稿で、米財務省の措置及びCENTCOMの攻撃について覚書違反だと非難した上で、自国の利益及び安全を守るために断固とした措置を講ずると警告しており、イランと米国との間の緊張が再び高まっている。
匿名の米当局者はロイター通信とのインタビューの中で、イランとの交渉は継続すると述べており、覚書がすぐに破棄されるようなことはないものと思われるが、9日に予定されているアリー・ハーメネイー前最高指導者のマシュハド埋葬後、しばらくは両国間の直接交渉が再開される可能性は低いだろう。
また、湾岸諸国のイランへの不信感も強まることが予想される。米国とイランの仲介役を演じてきたカタルやサウジアラビアは、7月3日にテヘランで行われたアリー・ハーメネイー前最高指導者の葬儀に代表団を送る(カタルは国会議長、サウジアラビアは副外相)など、イランとの和解に動き出していただけに、今回のイランによるものとされるタンカー攻撃は、融和ムードに水を差すことになりそうだ。なお、湾岸6カ国中、UAE、クウェイト及びバハレーンはハーメネイー師の葬儀に代表団を派遣していない。
【参考】
「イラン:専門家会議の一部議員らが米国との和平協議に否定的な声明を発表」『中東かわら版』No.51。
「イラン:米国との和平協議が開始」『中東かわら版』No.47。
(研究主幹 斎藤 正道)
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