中東かわら版

№43 レバノン:イスラエルによる攻撃が続く

 保健省は、過去24時間(=2026年6月16日)のイスラエルによる攻撃で計28人が死亡、70人が負傷したと発表した。これにより2026年3月2日以来のイスラエルによる攻撃の死者数は3826人、負傷者数は1万1851人となった。イスラエルによる攻撃は、ナバティーヤ郡、ジェジン郡など、南レバノンの諸地域に無人機による爆撃と砲撃によって行われた。

 なお、イスラエルの侵攻に応戦しているヒズブッラーは、3月2日以来1日当たり十数件~30件程度の戦果を発表していたが、16日は戦果を発表せず過去の攻撃の動画を数件発信するにとどまった。

評価

 アメリカとイランは「停戦」についての覚書に調印したものの、イスラエルによるレバノンへの攻撃が止むことを期待するのは楽観的に過ぎる。最大の問題点は、イスラエルがアメリカ・イラン間の覚書の当事者ではないことだ。アメリカのトランプ大統領は「停戦」の範囲にレバノンが含まれるとの認識のようで、イランのアラーグチー外相もイスラエルのレバノン領からの撤退を含めレバノンは覚書と不可分であると述べている。ただし、アメリカ・イラン間の覚書の詳細は現時点まで明らかでない。イラン側から流出する情報では「イラン政府、アメリカ政府、および両者の同盟者は、レバノンを含むあらゆる方面で直ちに、かつ最終的に戦争の終結を宣言する」となっているのに対し、アメリカ側から流出する情報では当該箇所を「イラン政府、アメリカ政府、および両者の同盟者は、あらゆる方面で直ちに、かつ最終的に戦争の終結を宣言する」としかなっていない。レバノンが明記されない場合、イスラエルによる攻撃が続いてもこれを咎め、抑止する主体は存在しないといってよい。覚書の内容が当事者ごとに異なる解釈をとる余地が大きいのならば、「停戦」の実効性は危ういものとなり、覚書締結の当事者の威信や信頼も損なうことになろう。

(特任研究員 髙岡 豊)

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