№35 イラク:サッカーイラク代表チームの選手がアメリカ入国時に長時間取り調べを受ける
- NEW2026イラク湾岸・アラビア半島地域
- 公開日:2026/06/10
北米3カ国で開催予定のサッカーワールドカップに出場予定のイラク代表チームの選手が、アメリカ入国の際に長時間の取り調べを受けていたことが判明した。取り調べを受けたのはアイマン・フサイン選手で、同人はイラクだけでなくアラブ諸国のチームでも競技した経歴がある著名な選手だ。フサイン選手は、シカゴ空港から入国しようとした際、携帯電話にムクタダー・サドル師の画像を保存していたことをとがめられて7時間以上拘束・取り調べを受けた。本件はSNSなどを通じて広く流布した模様であるが、2026年6月7日付『クドゥス・アラビー』紙(在外パレスチナ資本の汎アラブ紙)は、国際的なサッカー関連の不正追及で実績のあるフランス人記者が、アメリカ当局がフサイン選手がイラク人であるがゆえに正当な理由もなくテロリスト扱いして権利を侵害したと指摘したと報じた。
ちなみに、ムクタダー・サドル師は2003年のアメリカのイラク占領後に台頭したシーア派の政治潮流の指導者である。同人が指導するサドル潮流は、2000年代に度々アメリカ軍・イラク政府と武力衝突を引き起こしたほか、ボイコットした2025年の選挙を除き国政選挙で第一党の座を争う有力な勢力である。また、サドル潮流自身も民兵を擁している他、ここからアサーイブ・アフル・ハックやヌジャバー運動など国際的に危険視される党派・民兵が派生している。
評価
アメリカへの入国のための検査については、サッカーワールドカップの開催やこれに関連する各国代表チームの入国とは別に様々な問題があった。アムネスティー・インターナショナルは、サッカー観戦のためにアメリカに入国しようとする一般人にも、個人のSNSアカウント公開の義務付けられるなどの問題点があると指摘している。
サドル派は2010年代にはアメリカやイラク政府との武装闘争路線を前面に出さなくなっており、画像の保存がムクタダー・サドル師への支持や共感を意味するとみなしたとしても、それを安全保障上の脅威として扱うのは明らかに過剰反応と言える。今般、フサイン選手の携帯電話やそこで保存された情報が詳細な検査を受け、その内容を理由に長時間の拘束と取り調べを受けたことは、ワールドカップ開催に関わるアメリカ入国の問題が、国際的な注目を集めるイランに限らず広範囲に影響を及ぼすことを示している。
(特任研究員 髙岡 豊)
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