№3 イラン:国家安全保障最高評議会が米国との交渉について声明を発表
- NEW2026湾岸・アラビア半島地域イラン
- 公開日:2026/04/08
国家安全保障最高評議会(SNSC)は2026年4月8日付で、米国との交渉に関して声明を発表した。主な内容は以下のとおり。
1 敵は卑劣な戦争で、否定しがたい歴史的な敗北を喫した。殉教者となった大アーヤトッラー・イマーム・ハーメネイー最高指導者の清き血と、(彼の息子の)アーヤトッラー・モジタバー・ハーメネイー最高指導者兼全軍総司令官の賢慮、前線で戦うイスラーム戦士の努力、そして特に親愛なる国民の偉大なる参加によって、イランは偉大なる勝利を手に入れ、犯罪者である米国に10項目からなる提案を受け入れさせた。
2 これにより、米国は原則として、(1)不可侵の保証、(2)ホルムズ海峡に対するイランのコントロール(支配・管理)権の維持・継続、(3)(イランによるウラン)濃縮活動の承認、(4)すべての一次制裁の解除、(5)すべての二次制裁の解除、(6)すべての国連安保理決議(による対イラン制裁)の終了、(7)すべての(イラン関連のIAEA)理事会決議の終了、(8)イランが受けた損害に対する弁済、(9)地域からの米軍の撤退、(10)レバノンのイスラーム抵抗運動に対するものも含め、すべての戦闘の停止、にコミットすることになった。
3 この勝利をすべてのイラン国民に祝うとともに、この勝利の詳細が最終化するまで抵抗を継続し、団結を維持する必要があるということを強調する。
4 イランと抵抗勢力はこの間、この戦闘に関して(事前に)計画していた目標をすべて手に入れた。イランと抵抗勢力は、地域における米国の軍事マシーンをほぼ完璧に破壊し、敵がイランとの今回の戦争に備えて長年にわたって地域とその周辺に配置してきた設備を粉々にした。
5 敵は1カ月以上も前から、イランと抵抗勢力による強烈な攻撃の停止を懇願してきたが、イランの責任者たちは敵が後悔し、イランに対する脅威が長期的に取り除かれるなどの目標が達成されるまで、戦争を継続することを決めた。
6 今、偉大なるイラン国民にお伝えしたいのは、戦争の目標のほぼすべてが達成されたということである。イランは、必要性がある限り、この戦闘を継続し、偉大なる成果を確たるものにして、イランの力と支配の受け入れに基づいた、地域における政治・安全保障の新たな方程式を創造する決意である。
7 モジタバー最高指導者の賢慮と、国家安全保障最高評議会の承認により、イランと抵抗勢力が戦場において優越性を確保していることに鑑み、そしてイラン人民の正当なる要求のすべてが正式に受け入れられたことを受けて、イランの戦場での勝利が政治交渉で確たるものにするべく、(合意の)詳細の最終化に向けて(パキスタンの)イスラマバードで(米国と)最大15日間交渉を行うことが決定された。
8 イランがパキスタンを通じて米国に提示した10項目の提案には、・イラン軍の調整によるホルムズ海峡の管理された(船舶の)通航、・抵抗勢力に対する戦闘の停止、・地域にあるすべての基地からの米軍兵士の撤退、・イランの支配を保証する形での、ホルムズ海峡における安全な交通のプロトコルの確立、・イランの被害の完全な弁済、・すべての一次・二次制裁の解除、・(IAEA)理事会及び国連安保理での決議の終了、・国外にあるイラン資産の凍結解除、・これらすべての内容を国連安保理で決議すること、などが強調されている。国連安保理での決議によって、これらの合意は履行義務のある国際法となり、イラン国民にとって重要な外交的勝利となるだろう。
9 パキスタン首相はイランに、米国がこれらの原則を交渉の土台とすることを受け入れ、イラン国民の意思に屈した旨を伝えてきた。これにより、イランが2週間、もっぱらこれらの原則に則って、イスラマバードで米国と交渉を行うことが、(イラン体制の)最上層部で決断された。強調されねばならないのは、これは戦争の終結ではないということである。10項目の提案におけるイラン側の諸原則が受け入れられ、交渉でその詳細が最終化して初めて、イランは戦争の終結を受け入れるだろう。
10 この交渉は、4月10日からイスラマバードで開始される。イランはこの交渉のために2週間の期間を割り当てるが、双方の合意があればこの期間は延長される。すべての国民、指導者、政治グループは、最高指導者と体制最上層部の監督下で行われるこのプロセスを信用し、支持していただきたい。(国内に)分断をもたらすような発言は、いかなるものも厳に慎まれたい。戦場における敵の屈服が、交渉における確固たる政治的成果になれば、そのときに我々はこの偉大な歴史的勝利をともに祝うことになるだろう。しかしもしそうならなければ、イラン国民の要求すべてが実現されるまで、我々は戦場でともに戦うことになるだろう。我々の手は引き金の上に置かれている。ほんの些細なものであれ、違反行為が敵によって示されるようなことになれば、すぐにでも力強く反応することになろう。
評価
SNSCはイランの安保・外交問題の最高意思決定機関である。現在のSNSCのトップは、モハンマド・バーゲル・ゾルガドル氏で、彼は革命防衛隊の元幹部だ。一部報道では、アフマド・バヒーディー革命防衛隊筆頭副司令官からの強い要求により、ペゼシュキヤーン大統領が彼をSNSCの書記に任命したとされ、革命防衛隊の意思がSNSCの声明に強く反映している可能性がある。
今回のSNSCの声明は、イランの勝利宣言であるが、声明を読む限り、形だけの勝利で満足する様子は窺えない。イランの要求からは、ホルムズ海峡を含む地域の安全保障体制をイランの望む形で再編したいという大国主義的な願望が透けて見えており、米国はもちろんのこと、周辺のアラブ諸国も受け入れられるようなものではないだろう(ちなみに、自身の主張を最大限盛り込みたいという考えが影響したのか、SNSCの声明の「2」と「8」を見比べると、イランの要求が拡大していることが分かる)。イランの要求と米国の要求を、周辺のアラブ諸国も納得できるような形ですり合わせることができるのかは甚だ疑問であり、少なくとも2週間という停戦期間で細部を詰めることは不可能である。声明では期間の延長の可能性も指摘されており、2週間で大枠合意を取り付け、イラン・米国双方とも勝利宣言をした上で、(湾岸のアラブ諸国も巻き込んだ形で)細部での合意に向けて交渉を継続するという道筋も考えられる。しかし、緊張の火種は残ったままとなり、ホルムズ海峡の不安定さは当面続く可能性が高いように思われる。
なお、この声明に前後して、アラーグチー外相はXへの投稿で、2週間、イラン軍との調整のもとホルムズ海峡の安全な通航が可能になることを表明している。
【参考】
「イラン:ゾルガドル氏が国家安全保障最高評議会の新たな書記に就任」『中東トピックス』 2026年3月号(会員限定)。
(研究主幹 斎藤 正道)
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