中東かわら版

№2 イスラエル:イスラエル政府、停戦合意にレバノンは含まれないと投稿

 日本時間4月8日、トランプ米大統領は、イランとの間で2週間の停戦に合意したと発表した。

 イスラエルの『The Times of Israel』紙は、この停戦はレバノンにも及ぶ即時的なものであるとパキスタンのシャリフ首相は説明していたが、ネタニヤフ首相はこれに異議を唱えていると報じた。

 イスラエル政府側は、イランがホルムズ海峡の航行を再開し、米国・イスラエル・地域諸国への攻撃を停止することを条件に、この停戦を支持すると表明した。一方で、2週間の停戦にレバノンは含まれないとXに投稿した。   

評価

 今回の停戦合意は、イスラエル国内でイランの攻撃による被害が拡大し、戦争長期化への不満も目立ち始める中で打ち出された。

 4月1日、イスラエル中部ではイランのクラスター爆弾により、少なくとも16名が負傷し、5日には、イランのミサイルによりイスラエル北部で10名が負傷した。6日にもハイファ、テルアビブ、ラマト・ガンを含む20カ所以上がイランの攻撃を受けている。この攻撃によって、ハイファではビルが倒壊し、4名が死亡した。

 長引く戦争と被害の拡大に、イスラエルでも反対の声が挙がり始め、4日には厳格な戦時下の集会制限にもかかわらず、イスラエル各地で反戦デモが行われている。ハイファでのビル倒壊を受け、野党の政治家からも次々に批判が起こり、ラピード元首相も、軍事作戦が1カ月以上続いているにもかかわらず、イスラエルは戦争目的を達成できていないとネタニヤフ首相を批判した。

 今般の停戦合意は、このような状況の中で行われたものであるが、見方を変えれば、停戦の2週間はイスラエルがレバノンのヒズブッラーの殲滅のみに集中することができることも意味する。2月28日の開戦当初、ヒズブッラーの攻撃能力を軽視する意見がイスラエル軍の中にはあったが、3月15日に約200発のロケット弾をイスラエル北部に向けて撃つなど、ヒズブッラーが依然としてイスラエルにとっての脅威であることが明らかとなった。イスラエル軍はそれ以降、レバノン南部への攻撃を強めているが、4月2日にはヒズブッラーが約130発のロケット弾を撃ち、イスラエル国内で4名が軽傷を負っている。

 イスラエル軍幹部は、同国の防空システムが完全ではないことを認めており、イランやヒズブッラーによるミサイル攻撃で迎撃失敗が生じ、国内被害が拡大すれば、ネタニヤフ政権への批判が強まる可能性があった。今回、イスラエル側がレバノン除外を明示したことは、イラン戦線での一時的沈静化を利用しつつ、ヒズブッラーへの軍事圧力を維持・強化する余地を確保する意図を示すものと考えられる。イランの直接攻撃が一時的に弱まれば、その間、イスラエルは北部戦線により多くの戦力と注意を振り向けやすくなる。こうした停戦支持の背景には、イランの「前方抑止」として機能してきたヒズブッラーを弱体化させる狙いもあった可能性がある。

(主任研究員 平 寛多朗)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP