№21 イラン:モジタバー最高指導者、濃縮ウランの国外搬出に反対か
- NEW2026湾岸・アラビア半島地域イランイスラエルパキスタン
- 公開日:2026/05/22
2026年5月21日付ロイター通信は、2名の匿名のイラン高官の話として、モジタバー・ハーメネイー最高指導者が高濃縮ウランをイラン国外に搬出してはならないとする指示を出したと報じた。濃縮ウランは国内に留めるべきとの考えは、体制内でのコンセンサスになっているという。
トランプ米大統領は同日、記者団に対し、イランにある濃縮ウランについて「我々はそれを手に入れることになるだろう。‥‥我々はそれを手に入れた後、恐らく破壊することになるだろう。彼ら(イラン)がそれを手に入れることを、我々が許すつもりはない」と述べており、イラン国内にある濃縮ウランの取り扱いをめぐって、イランと米国の間では相当の意見の隔たりがある。ロイター通信の取材に応じたイラン高官の1人は、IAEAの監視下で高濃縮ウランを希釈するといったアイディアを示しているが、このアイディアがトランプ米大統領を満足させるかは疑問である。
なお、国際原子力機関(IAEA)によると、イランには2025年6月の時点で60%に濃縮されたウランが約441キロあるとされ、グロッシIAEA事務局長によれば、そのうちの200キロ強はエスファハーンにある核施設の地下トンネルに保存されているという。
評価
5月20日、パキスタンのナカビー内相が16日に続きイランを再訪問し、イラン側に米国提案を手交した。報道によると、パキスタン軍のトップでトランプ米大統領とも親密な関係にあるムニール元帥もイランを訪問する予定とされ、パキスタンを仲介役としたイラン・米国/イスラエル戦争の終結に向けた外交が活発化している。ルビオ米国務長官も、パキスタンを通じたイラン・米国間の話し合いに前進があったことを認めている。
しかし、先述の隔たりを考えると、両国の間で恒久的な停戦のための合意が結ばれる可能性は、現時点では決して高くない。
イランは、米国及びイスラエルがイランを再び攻撃しないことの確約を求めており、そのための「保証」として、(高)濃縮ウランを手元に残し、ホルムズ海峡への支配権を握ったままにしておきたいと考えている。この2つは、イランにとって抑止力であり、かつ貴重な交渉カードとなっている。イランのバガーイー外務報道官も5月22日、まずはレバノンを含むすべての戦線での戦闘を終結させることに取り組み、その後で濃縮ウランの問題について話し合いを行う方針を示している。
これに対し、米国は濃縮ウランの国外搬出を恒久的な停戦合意の前提条件にしており、両国の話し合いの出発点が一致しない状況が続いている。イスラエルに至っては、同国のネタニヤフ首相が5月10日の米CBSとのインタビューで述べているように、・核施設が取り壊され、・イランが親イラン民兵組織への支援を止め、・同国の弾道ミサイル問題が解決されない限り、戦争の目的が達せられたとは言えないとの姿勢であり、たとえ米国とイランとの間で何らかの停戦合意が結ばれても、イスラエルの戦争継続への意欲は残ったままとなる可能性が高い。このことが、イラン側が米国との安易な妥協に踏み込めない要因となっているように思われる。
(研究主幹 斎藤 正道)
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