中東かわら版

№1 バハレーン・クウェイト:テロ組織の摘発とイランによる重要施設を狙った攻撃

 バハレーンおよびクウェイトは、現在、イランおよび親イラン組織による国内外両面の脅威に直面している。

 3月30日、バハレーン内務省は、レバノン南部を拠点とするヒズブッラーに属するテロリスト3名を逮捕したと発表した。3名はレバノン渡航中にヒズブッラーのメンバーと接触し、戦闘訓練を受けていた。また報道によれば、イランによるバハレーン国内の被害状況を伝える画像を送信し、ヒズブッラーの活動支援のため、慈善活動を通して資金を集め、同時に国内でのテロ計画の準備を進めていた。

 他方、ロイターは、4月1日、イランによる攻撃でバハレーン国内にあるアマゾンのクラウド施設が被害を受けたと伝えた。同社のクラウド施設は3月2日にも被害を受けている。

 一方クウェイトでは、3月25日、内務省が高官等の暗殺を計画していたヒズブッラー関連組織のテロネットワークを摘発したと発表した。報道によれば、国内で6名が拘束され、さらに国外の14人も特定された。これに先立つ3月16日にも、クウェイトではヒズブッラーに関連する組織の16名が摘発されていた。

 さらに4月1日、クウェイト民間航空庁はイランと親イラン民兵組織の攻撃により、クウェイト国際空港の燃料貯蔵施設が甚大な被害を受けたと発表した。同空港は3月25日にも攻撃を受け、消火活動に58時間かかっていた。   

評価

 今般ヒズブッラー関連組織に属する人物たちが摘発されたバハレーンもクウェイトも、政権を担う王政がスンナ派である一方、国内に多数のシーア派を抱える国である。その数は、バハレーンで国民の5割から7割、クウェイトで約3割と言われている。今般の摘発は、シーア派住民を多く抱える両国において、レバノンを拠点とする親イラン組織ヒズブッラーに関連する人的ネットワークが、バハレーンおよびクウェイトに一定程度存在していた可能性を示唆するものである。

 バハレーン、クウェイト政府による発表では、今般摘発されたヒズブッラーに関連する組織は、国内での要人殺害計画や、国内の重要施設の位置をイランに伝える等の諜報活動を行っていた。現下の状況では、そういった活動は当然無視できるものではなく、国内における大きな脅威となっている可能性がある。そのことを踏まえれば、両国では今後、ヒズブッラー関連組織の摘発を名目として、シーア派住民一般に対する監視や統制が強まる可能性がある。

 他方、国外からはイランや親イラン民兵組織による激しい攻撃を両国は連日受けている。4月1日にバハレーン国防軍の発表として報じられたところでは、2月28日以降、同国は186発のミサイルと419機のドローンを迎撃している。クウェイトに関しては、3月29日に報じられた国防省の発表では、307発の弾道ミサイル、616機のドローンを国内で検知している。また軍や国防省の発表を見る限り、脅威となる飛翔体の数は、減少傾向ではなくむしろ増加傾向にある。

 さらに、両国にとって重要な施設が標的となり被害も生じている。今般報じられたクウェイトの国際空港は、同国にとって唯一の民間国際空港である。同空港が大きな損害を受ければ、同国唯一の空の玄関口が機能不全に陥ることになる。サウジアラビアのダンマーム空港等を経由してクウェイトに入国するルートはあるものの、空港の機能停止は同国の人や物の移動に一定の制約をもたらすとみられる。

 米国からは停戦に関する言説が報道されるようになってきたが、停戦が実現されたとしてもバハレーン、クウェイトにおける重要インフラが損傷していれば、その影響は小さくなく、社会・経済活動の正常化には一定の時間を要する可能性がある。また、今般の戦争で露呈した親イラン組織と結びつく人的ネットワークの脅威は、停戦が実現しても直ちに消えるものではなく、戦後における両国の政治・治安運営にも影響するとみられる。例えば、王政への忠誠の維持を意識した包摂策や、治安対策の名目で一部宗派コミュニティに対する監視が強化される可能性がある。

(主任研究員 平 寛多朗)

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