中東かわら版

№19 イラク:ザイディー内閣が発足

 2026年5月14日、国会は以下の通りのアリー・ザイディー首相と14人の閣僚人事を信任した。

 

氏名

役職

特記事項

アリー・ザイディー

首相

 

バーシム・アバーディー

石油相

建設と開発同盟

ムハンマド・カルブーリー

鉱工業相

スンナ派

アリー・ワヒーブ

電力相

建設と開発同盟

アブドゥルフサイン・アジーズ

保健相

ファディーラ党

サルワ・アブドゥルワーヒド

環境相

女性、クルド人、新世代党

アブドゥルラヒーム・ジャーシム

農業相

建設と開発同盟

ムサンナー・タミーミー

水資源相

バドル機構

ムスタファー・アーニー

貿易相

スンナ派

ハーリド・シャワーニー

司法相

留任、クルド人、PUK

アブドゥルカリーム・アブターン

教育相

ジュブール部族

ワハブ・ハサニー

運輸相

バドル機構

ファーリフ・サーリー

財務相

ヒクマ潮流

フアード・フサイン

外相

留任、クルド人、KDP

ムスタファー・ジャッバール・サナド

通信相

イスラーム最高評議会

 

 なお、内相、国防相、労働相、移民相、住宅相、建設相、計画相、文化相、高等教育相、青年相、スポーツ相が、候補者が信任されなかった、諸党派間で候補者の調整がつかなかったなどの理由で空席となっている。

評価

 2025年11月の国会議員選挙から、大統領の選出、大統領から首相候補への組閣委任、国会での内閣信任までの政治日程を期日通り行い、憲政上の空白を生じさせないために、内相、国防相、計画相などの重要な役職が空席のまま内閣が信任された。このような形態は、これまでのイラクの政治過程でたびたび見られたことであり、それ自体は珍しいことではない。ただし、今般の組閣は、アメリカとイランが交戦する中、与党連合である調整枠組みが擁立したマーリキー元首相がアメリカの「拒絶」により立候補を取り下げたほか、スーダーニー前首相も立候補を取り下げた。クルド人の諸党派の関係も円満ではなく、政府や与党連合内の関係の推移によって、空席の閣僚の補充や政権運営が停滞する可能性がある。

 新内閣には予算編成などの課題があるが、特に重要になるのはイラクの政局に大きな影響力を持つアメリカ、イランとの関係をどのように取り扱うかと思われる。特に、アメリカからは「国家による武器の独占」を名分として「親イラン民兵」の武装解除が迫られている。しかし、武装解除の対象となっている諸派は、イラクの国内法上は「人民動員隊」として正式な治安部隊の一部と位置付けられている上、民兵を擁して「人民動員隊」に参加している諸派のうちバドル機構、イスラーム最高評議会、ファディーラ党が閣僚を輩出した。一方、アサーイブ・アフル・ハック、ヌジャバー運動、ヒズブッラー部隊は閣僚を出さなかったが、これらは2026年2月28日以来のアメリカ・イスラエルとイランとの交戦で、アメリカ・イスラエル権益や周辺諸国を攻撃した団体である。2014年に「イスラーム国」に大敗を喫したこともあり、正規の軍・治安部隊に全幅の信頼を寄せ難い中、民兵の処遇は内政・外交上の最大の課題となるだろう。

(特任研究員 髙岡 豊)

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