№153 ヨルダン:イラクからのヨルダンを標的とした攻撃を非難
2026年3月28日、ヨルダン軍は、イランが22発のミサイルを発射し、うち2発は迎撃に失敗し、ヨルダン東部に落下したと発表した。これで戦争開始以来、イランからヨルダンに向けて発射されたミサイルとドローンの数は262となり、そのうち242の迎撃に成功した。これまでに死者は報告されていないものの、攻撃に伴い負傷した者の数は25名に達した。
2026年3月25日、サファディー外相はテレビ番組に出演し、ヨルダンは地域で進行中の当事国ではないもののその影響を受けていると述べ、ヨルダンには友好国の軍隊は駐留しているが、外国の軍事基地は存在しないと強調した。さらに同外相は、ヨルダンがイラクに拠点を置く複数の集団による攻撃を受けてきたと述べ、政府はイラク政府と繰り返し連絡を取り、こうした攻撃の停止と再発防止を求めていると明らかにした。
同日、ヨルダンは、UAE、バハレーン、サウジアラビア、カタル、クウェイトと共にイラクを拠点とするイラン系武装勢力による複数の地域諸国に対する攻撃を非難した。
評価
2026年2月28日にイスラエルが米国と共同してイランを攻撃して以来、イラクを拠点とするシーア派民兵組織の活動が活発化している。これらの組織は3月に入り、イスラエルや米国を非難するとともに、攻撃を行ったとする声明を相次いで出している。こうした武装組織がイランと密接な関係を有することは広く指摘されているが、個々の攻撃についてイラン政府の直接関与を示す証拠は限られている。他方で、双方の行動が連動していることは否定しがたい。これまでヨルダンで検知されたミサイルとドローンによる262の攻撃のうち、どの程度がイラクのシーア派民兵組織よるものであるかは不明であるが、今般のサファディー外相の発言はヨルダンがイラン以外からも攻撃を受けていることを公式に認める形となった。
民兵組織が攻撃に参加しているという事実は、ヨルダンに対する攻撃の主体や狙いをより不明瞭なものにしている。28日の攻撃は、ヨルダン東部にミサイルが落下しており、同地域の軍事施設を念頭に置いた攻撃だった可能性がある。ヨルダン東部のアズラクにはムワッファク・サルティー・空軍基地があり、米軍は同基地を使用してきた。実際、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、今般の攻撃が始まる前の2026年2月20日、同基地に多数の米軍機が集結している衛星画像を報じている。他方で、イランとイラクの親イラン系武装組織が米軍施設という共通の戦略目標を有していたとしても、イスラエルによるイラン要人殺害などを受けて両者の調整機能が以前より弱まっている可能性がある。そのため、攻撃対象の選定や作戦運用が今後も常に完全に一体化するとは限らず、今後の攻撃についてはイランの動向のみから十分に予測できない可能性がある。
ヨルダンはイスラエルとイラク、サウジの間に位置し「緩衝国家」の役割を果たしてきたが、それだけではなく、イスラエル等で有事が生じた際の避難経路としての機能も担ってきた。実際、2023年10月7日のハマースによる攻撃後、イスラエル在住邦人の退避はヨルダンを経由して行われた。サファディー外相もテレビ番組出演の際に、多くの国が地域情勢の緊迫化時に自国民の避難をヨルダンに頼っていることを強調している。また3月27日、イスラエルメディアは、イスラエル人が移動ルートとして、ヨルダンのアカバ空港と陸路国境を利用していると報じている。仮に、イラクの親イラン系武装組織が、そうした避難・移動経路を標的にするなら、地域情勢に更なる混乱を引き起こすことが予想される。
(研究員 平 寛多朗)
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