中東かわら版

№152 アルジェリア:天然ガスの追加調達を目指し、イタリアのメローニ首相が来訪

 2026年3月25日、イタリアのメローニ首相はアルジェリアを訪問し、タブーン大統領と会談した。メローニ首相のアルジェリア訪問は、2023年1月以来2回目となる。会談後の共同記者会見でメローニ首相は、今次訪問はイタリアがアルジェリアとの関係をいかに重視しているかを示すものであり、アルジェリアはイタリアにとって極めて重要な戦略的パートナーであると強調した。

 またメローニ首相は、両国間の協力がエネルギー分野を中心に幅広く進展していると指摘し、特にイタリア炭化水素公社「エニ」とアルジェリア炭化水素公社「ソナトラック」が、シェールガスや海洋探査といった新たな分野でも連携を進めていると説明した。その上で、こうした協力の進展により、中長期的にはアルジェリアからイタリアへのガス供給拡大が可能になるとの見方を示した。

 

評価

 今回、メローニ首相がアルジェリアを訪問した目的は、カタル産の液化天然ガス(LNG)の輸入減少への懸念が高まる中、アルジェリアから天然ガスを追加調達することにある。カタルは3月2日にイランによるドローン攻撃を受けてLNGの生産停止を余儀なくされ、その後3月18日のミサイル攻撃では、14基あるLNG生産設備のうち2基が損傷した。これにより、LNG生産能力の長期的な低下は避けられない状況となっている。

 イタリアのカタル産LNG輸入量は2024年時点で480万トン(LNG総輸入量の約45%)にのぼり(出所:GIIGNL)、パイプライン経由分を含む天然ガス総輸入量の約11%に相当する。イタリアではガス火力発電が総発電量の約40%を担っていることから、その燃料であるカタル産LNGの供給減少は、電力の安定供給にも影響を及ぼす可能性がある。

 こうした中でイタリアがアルジェリアを重視した背景には、ウクライナ戦争開始後にアルジェリアがイタリア向けの天然ガス追加供給に応じた実績がある。イタリアは2021年時点でロシア産ガスへの依存度が40%と高く、脱ロシアを進めるためにアルジェリアとのエネルギー関係を強化してきた。欧州諸国の中で、投資拡大の約束と引き換えにアルジェリア産ガスの追加供給を確保できたのは、イタリアのみとなった。

 アルジェリアにとっても、イタリア向けガス輸出の拡大は、ロシア産に続き、カタル産ガスのシェアも奪い、ガス輸出収入を増やす好機となる。一方、国内のガス需要が逼迫していることや、アルジェリア・イタリア間の「トランスメッド・ガスパイプライン」の輸送能力にも制約があることから、アルジェリアがイタリア向けのガス輸出をどの程度増やせるかは不透明な面もある。ただ、アルジェリアは、ホルムズ海峡を迂回可能なエネルギー供給国としての地位を強化するため、これまで以上に資源開発事業の拡大に注力していくだろう。

 

【参考】

カタル:イランの攻撃によりLNG生産設備の一部が損傷、修復に最大5年」『中東かわら版』No.146。

アルジェリア:ロシア依存軽減のため、イタリアへのガス追加輸出に合意」『中東かわら版』2022年度No.8。

 

(主任研究員 高橋 雅英)

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