№149 パレスチナ:イランのミサイルの破片198個がパレスチナに落下
2026年3月21日、パレスチナ自治政府(PA)の公式通信社『WAFA』は、パレスチナ警察の中央作戦局が、2026年2月28日以降、ヨルダン川西岸各地でミサイルの破片198個の落下があり、これまでに5名が死亡したと発表したと報じた。5名のうち4名はヨルダン川西岸地区のヘブロン県で死亡した。また報道によれば、これまでに負傷者は9名であり、物的損害は約27件報告されている。
これに先立つ3月18日、『WAFA』はヘブロン南西に位置するバイト・アウワーにある美容院にミサイルの破片が落下し、パレスチナ人女性3名が死亡、13人が負傷したと報じた。後に負傷した女性1名が死亡し、死者の合計は4名となった。死者には未成年者と妊婦が含まれていた。

(グーグルマップを元に筆者作成。赤のポイント:バイト・アウワー。緑の地域:ヘブロン県。黄色の線:イスラエルとヨルダン川西岸地区の境界。)
評価
今般報じられたミサイルの破片落下は、イランがイスラエル領土に向けて発射したミサイルが迎撃されたものとみられる。PAが行政を担うヨルダン川西岸地区はイスラエルの主要な都市に隣接しており、イスラエル領空内に侵入する前に迎撃を行えば、その破片はパレスチナ側に落下する。パレスチナ側に迎撃能力がないことを考えれば、パレスチナで落下した破片はイスラエルによる迎撃の結果である可能性が高い。死者が報告されているヘブロン県およびバイト・アウワーもイスラエルとの境界付近に位置しており、パレスチナ側の報道では、イスラエル領土を防衛するための迎撃がパレスチナ側に被害をもたらしたことになる。
イスラエル側の報道によれば、今般のイランによるミサイル攻撃では、ミサイルの着弾被害に加え、迎撃によって生じた破片の落下もイスラエル国内の被害要因となっている。ミサイル自体の迎撃はできても、その破片による被害を食い止めることは難しい。被害を最小限に抑えるため、都市部から離れた地点で迎撃が行われれば、結果として、ヨルダン川西岸地区はイスラエル国内への破片落下リスクを相対的に吸収する一種の「緩衝地帯」のように機能することになる。
他方、未成年者や妊婦を含む女性4名が亡くなったバイト・アウワーの悲劇は、パレスチナメディアで報じられているものの、多数の暴力事案の1つとして扱われる傾向がある。これは、パレスチナを取りまく環境と関係していると思われる。バイト・アウワーでの悲劇があった18日、PAの公式通信社『WAFA』は以下のことを報じている。「ガザ地区への空爆で男性1名死亡。入植者がパレスチナ人女性をペッパースプレーで攻撃。イスラエル軍が夜間に襲撃し、パレスチナ人女性15名を拘束。入植者がパレスチナ市民の土地をブルドーザーで破壊。入植者が羊飼いを襲撃。2023年10月以降のガザ地区の死者数が72253人に到達」。
本来、他国の「緩衝地帯」として使用され、それにより死者が生じたのであれば大きな問題である。しかし、ガザ地区では空爆が続き、ヨルダン川西岸地区では日常的に暴力に晒され、日々死亡者が報告されているような状況では、イランのミサイル破片落下による死亡も、その報告の中に埋もれてしまう。今般の破片落下に関するパレスチナ側の報道は、パレスチナが置かれている状況を如実に示していると思われる。
(研究員 平 寛多朗)
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/







.png)
