№147 クウェイト:ヒズブッラーに関連するテロ集団を逮捕
- NEW2026湾岸・アラビア半島地域クウェイト
- 公開日:2026/03/23
2026年3月17日、クウェイト内務省は、レバノンのヒズブッラーと関連するテロ集団のメンバーらを逮捕したと発表した。発表によれば、このテロ集団はクウェイト国民14名、レバノン人2名で構成され、銃器、弾薬、暗号化通信機器、ドローン、麻薬、現金などを所持していた。同組織は、クウェイトの秩序の不安定化を図ると同時に、非合法である同組織への加入を勧誘することを目的に活動していたとみられる。
3月19日、内務省はヒズブッラーに関連するテロ組織のメンバーであった、10名の市民を逮捕したと発表した。逮捕された人物たちは、標的施設の位置情報を外国の組織に提供していたとみられる。
3月21日、内務省は、現在の情勢を受け、SNS上に1000人以上が逮捕されたと虚偽の情報を拡散し、イランに共感する人物たちを処罰しないよう求めていた人物を逮捕したと発表した。
評価
ヒズブッラーは、レバノン南部に勢力を持つシーア派の武装組織である。イランの支援を受け、長年、イスラエルに対する武装「抵抗」運動を展開し、イランの対イスラエル戦略における最前線の役割を果たしてきた。今般逮捕されたクウェイト国民は、シーア派、あるいは少なくともヒズブッラーやイランに近い組織・思想に親和性を有していたと思われる。実際、イスラエルメディアが報じたところによれば、クウェイト内務省が公開した押収品には、イスラエルによって殺害されたイランの前最高指導者アリー・ハーメネイー師、ヒズブッラーの元指導者ナスラッラー師の写真が含まれていた。
今般の摘発は、海外のシーア派の影響がクウェイト国内になお及んでいる可能性を示唆している。クウェイト国民の約3割はシーア派に属しており、一般的にはクウェイト社会においてスンナ派・シーア派の宗派間の対立は比較的抑制されてきたと言われている。他方、2015年には、クウェイトのアブダリ地区で銃器68丁、手榴弾204個、爆発物144キロが押収される事件が発生し、最終的に25名のシーア派クウェイト国民が起訴された。クウェイト当局はこれをイランおよびヒズブッラー関連の事件として扱った。また2017年には同事件で有罪判決を受けた者の一部が、イランとヒズブッラーのためにスパイ行為を行ったとして再逮捕されている。
クウェイトの報道によれば、逮捕されたクウェイト人たちは「標的施設の位置情報を外国の組織に提供」していたことが分かっている。「標的施設」はおそらくクウェイト国内のものと思われる。2月28日にイスラエル・米国がイランを攻撃して以降、クウェイトは継続的にイランによるミサイル・ドローン攻撃を受けている。今般の事案は、クウェイト国内においてイラン、ヒズブッラーと連動しうる勢力が存在する可能性を示唆している。
他方、クウェイト国内ではイラン情勢をめぐりSNS上で虚偽や誤解を招く投稿が行われている。こういったものの中には、イラン、ヒズブッラーを支持する国内のシーア派も投稿している可能性があり、国内の安定化を図るため、SNS等を通じた「反国家」的な言説は取り締まりが強化されていくとみられる。
今般の「標的施設の位置情報」の提供や、現在のSNS上における風説の流布は、イスラエル・米国によるイランへの攻撃や、イスラエルによるレバノン南部への攻撃拡大と無関係とは言い切れない。他方で、イスラエルの攻撃によってヒズブッラーやイランが弱体化し、クウェイト国内と連動しうるネットワークが弱まることで、現在の国内情勢が改善に向かう可能性もある。すなわちクウェイトは、イスラエルの攻撃によって国内におけるヒズブッラーおよびイランとのネットワークの危険性が顕在化する一方、同じ攻撃が結果としてそうした脅威の低下につながる可能性もあるという、複雑な状況に置かれている。
(研究員 平 寛多朗)
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