№146 カタル:イランの攻撃によりLNG生産設備の一部が損傷、修復に最大5年
- 2026湾岸・アラビア半島地域カタル
- 公開日:2026/03/23
2026年3月19日、カタルのカアビー・エネルギー担当国務相(兼カタルエナジー社CEO)は、18日から19日未明にかけてイランがラアス・ラファーン工業都市に行ったミサイル攻撃により、液化天然ガス(LNG)の第4・第6生産設備(※ラアス・ガスLNGプロジェクト)が損傷したと明らかにした。両設備はいずれも、カタルエナジー社と米エクソンモービル社の合弁事業である。
今回の損傷により、カタルのLNG輸出の約17%に当たる1280万トン分の生産量が失われ、年間の収益損失は200億ドルに上る見込みである。カアビー大臣は、両生産設備の復旧には3~5年を要するとの見通しを示した。また、影響を受ける中国、韓国、イタリア、ベルギーとのLNG長期契約についても、最大5年間の不可抗力を余儀なくされる可能性があると説明した。
さらに、石油代替燃料(GTL)を生産する隣接施設「パールGTL」も攻撃を受けた。同施設は英国のシェル社が運営している。カアビー大臣によれば、被害状況は調査中だが、少なくとも1年間は稼働を停止する見込みである。これに伴い、コンデンセートが輸出量の約24%(1860万バーレル)、ヘリウムが輸出量の約14%(3億954万立法フィート)、液化石油ガス(LPG)が輸出量の約13%(128万1000トン)、ナフサが輸出量の約6%(59万4000トン)、硫黄が輸出量の約6%(18万トン)の生産が失われる見通しである。
評価
カタルは3月2日にイランのドローン攻撃を受け、LNGの生産停止を余儀なくされていたが、今回のミサイル攻撃により、14基あるLNG生産設備のうち2基が損傷し、生産能力の長期的な低下が避けられない状況となった。カタルのLNG年産能力は、現在の約7800万トンから、約6500万トンにまで落ち込む見通しだ。さらに、一連の攻撃により、カタルが2017年から進めてきたLNG増産計画の第1弾(3200万トン分の生産設備の新設)についても、生産開始が2027年以降に遅れる見通しとなった。カタルのLNG生産停止の長期化により、世界のLNG需給は大きく崩れ、国際ガス価格はさらに高騰していくとみられる。
カタルのLNG輸出大国としての地位が大きく揺らぐ中、収益損失を補う手段として期待されているのが、米国でのLNG事業である。カタルエナジー社は、エクソンモービル社と共同で進める米テキサス州のゴールデンパスLNG事業(年産能力最大1800万トン)で、生産されるLNGの7割を引き取り、販売する予定である。カタルエナジー社はこうした海外事業を通じて、輸出先を柔軟に変更できる自国産以外のLNGを確保し、LNGトレーディングによる新たな収益源の確立を進めてきた。今後、LNGスポット市場の価格上昇が見込まれる中、カタルにとっては、米国産LNGを可能な限り高値で販売し続けることが、国家財政の柱である資源収入の減少を抑える上で重要となる。
【参考】
「カタル:イランからドローン攻撃を受け、LNG生産が停止」『中東かわら版』No.130。
「カタル:ガス田拡張計画の第3段階NFWが始動」『中東かわら版』2025年度No.115。
「カタル:ガス田拡張計画第1段階でのLNG生産が2026年半ばに開始へ」『中東かわら版』2025年度No.16。
(主任研究員 高橋 雅英)
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