中東かわら版

№142 オマーン:モジタバー最高指導者への祝電とオマーン外交

 2026年3月9日、ハイサム国王は、モジタバー・ハーメネイー師がイランの最高指導者に選出されたことを受け、祝電を送った。祝電では、指導者としての成功を祈る言葉が述べられていた。

 3月11日、ハイサム国王は、イランのペゼシュキヤーン大統領からの電話を受け、オマーンへの継続的な攻撃を非難するとともに、「中立」というオマーンの原則的立場を維持することを改めて表明した。

 同日、政府系アラビア語紙の『オマーン』は、ブーサイーディー外相がメディア関係者との会合で、オマーンはイスラエルとの関係正常化は行わないと述べたことを報じた。

評価 

 オマーンは3月1日にイランにより攻撃を受けて以降、報道されている限りでは3月3日までに数回の攻撃を受けている。3月4日から9日まで攻撃が報じられていないとはいえ、湾岸諸国にイランが報復を継続する中で、新しい最高指導者に祝電を送るのはオマーン外交の特異性を示すものであろう。

 3月11日に、イスラエルとの関係正常化を否定する、ブーサイーディー外相の発言が政府系メディアである『オマーン』紙で報じられたことも、注目に値する。現職の外相による発言であり、その意味は決して小さくない。一方で、オマーンの公式通信社および外務省は外相の発言があった会合については報じているものの、イスラエルに関する発言には言及していない。つまり、国家としての正式な声明の形をとったわけではないものの、政府系メディアを通じてイスラエルとの正常化に否定的な姿勢を対外的に発信した構図である。

 このような複雑な外交を展開するのは、米・イスラエルとイランの衝突に対してオマーンが仲介の役割を果たす意思をもっているためであろう。イラン側にも、オマーンに一定の期待を寄せている可能性がある。3月11日に、オマーンにとって極めて重要な、ドゥクム付近とサラーラ港がイラン攻撃を受けているが、同日、ハイサム国王はイランのペゼシュキヤーン大統領から電話を「受け」、緊張緩和に向けた取り組みについて協議している。少なくともオマーン側の公開情報ベースでは、イラン側がオマーンとの直接対話を必要としていたこと、またオマーンとの交渉の余地を完全に閉ざそうとしていないことがうかがえる。

 3月12日と13日、イランはUAE内にあるオマーンの飛び地ハサブとオマーン北東部のソハールにドローンによる攻撃を行っており、イランがオマーンを介して停戦を望んでいるとは言えない。他方で、16日、ブーサイーディー外相は湾岸諸国暦訪中のエジプトのアブドゥルアーティー外相と会談し、緊張緩和に向けた協議を行っている。

 オマーンは、GCC諸国の中でも1人当たりGDPが相対的に低く、石油・ガス以外の外貨獲得手段の育成が課題となっている。そのため同国は、インド洋・東アフリカ・西アジアを結ぶ物流ハブとしての地位確立を目指してきた。イラン情勢の沈静化と周辺海域の安定は、オマーンにとって経済上も死活的に重要である。その意味で、オマーンは攻撃を受けつつも、仲介の可能性を探る複雑な外交を今後も続けるとみられる。

(研究員 平 寛多朗)

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