№140 イラン:モジタバー・ハーメネイー新最高指導者が初の声明
- 2026湾岸・アラビア半島地域イラン
- 公開日:2026/03/13
モジタバー・ハーメネイー新最高指導者による初めての声明が、2026年3月12日付で発表された。主な内容は以下のとおり。
(1)冒頭で、コーラン第2章106節「より良いものか、あるいは同様のものをもたらさない限り、我らがしるしを破棄したり、忘れさせたりすることはない」を引用し、イスラーム法学者であることをアピール。
(2)自身が最高指導者に選出されたことは、国民と同じく、イラン国営放送で知ったと述べて、自身の選出が前もって決まっていたわけではないことを強調。
(3)最高指導者の仕事は極めて困難なものであり、自分一人ではこなすことができないとして、国民の協力を呼びかけ。
(4)アリー・ハーメネイー前最高指導者は、国民をあらゆる領域に参加させ、彼らの能力を活用したと指摘した上で、彼は「共和国」の真の意味を理解し、信じ、それを活性化させたと述べて、最高指導位の「世襲」によるイスラーム共和国の「王政化」を否定。
(5)冒頭に引用したコーランの章句は、自身がアリー・ハーメネイー師と同等あるいは彼より優秀であることを意味するものではなく、ハーメネイー師の偉大なる恵みが我々から失われたとしても、神はそのかわりとして、勇敢なるイラン国民を体制に与えてくれたという意味だと指摘。
(6)国民各層の団結を呼びかけた上で、自らの役割を理解し実行するよう国民に要求。最高指導者をはじめとする国の指導者の役割とは、これらの役割を国民一人ひとりに指摘することだとし、イスラーム共和国では「人民」が主役であることを強調。
(7)勇敢な兵士たちに感謝を表明した上で、人民大衆が求めているのは、敵を後悔させるような効果的な防衛だとし、ホルムズ海峡の封鎖という手段を継続して利用すべきであると主張。その上で、「敵があまり経験したことがなく、それによって大いに被害を受けるような、別の戦線を開くこと」について研究が行われてきたとし、戦争状態が継続した場合、それが発動されるだろうと警告。
(8)イエメンのホーシー派、ヒズブッラー、イラク抵抗勢力に感謝。
(9)戦争で亡くなった被害者やその遺族へのお悔やみを述べた上で、自身の妻、妹、その娘、義理の兄弟がアリー・ハーメネイー師とともに亡くなったこと確認。
(10)殉教者たちの血の復讐を諦めることはないと約束した上で、特に米軍による爆撃で亡くなった女子小学校の児童の復讐に言及。
(11)敵から賠償金を取るとし、敵がそれを拒めば、敵の財産から徴収し、それができなければ、彼らの財産を破壊すると明言。
(12)地域諸国の指導者に向けて、建設的な関係を持ちたいと述べつつ、敵はこれらの国々で軍事基地や経済拠点を構え、これらの軍事基地の一部はイランへの攻撃に使われたとし、周辺諸国を侵略することなく、こうした基地・拠点のみを攻撃してきたし、これからも攻撃を継続せざるを得ないと主張。
(13)周辺諸国は、イランを侵略し、イラン国民を殺戮している侵略者・殺人鬼に対して何をするのかをはっきりさせるべきであるとし、これらの基地・拠点の活動を可及的速やかに停止させるよう勧告すると主張。
評価
モジタバー・ハーメネイー最高指導者の初めての声明が、同師の選出から3日がたった12日付で発表されたが、この声明はイラン国営放送のアナウンサーが読み上げたものであり、同師の動画はおろか、肉声すら公になっておらず、果たしてこの声明がモジタバー師によって作成されたものか、彼の周辺の実力者がモジタバー師の名を借りて、自らの意思を表明したものなのか、依然としてはっきりしない。
モジタバー師は足を骨折し、顔を怪我しているとされ、人前に姿を表したり、声を発したりすることのできる状態ではないのかもしれない。
モジタバー師がいかなる思想の持ち主なのかが分らない現状において、彼のものとされる声明は、モジタバー師個人の考えが反映されたものというよりは、イランで実権を握る、あるいは戦争を指揮している者たちの見解が反映されたものと見るべきだろう。
その上で、この声明で注目されるのは、(7)での「敵があまり経験したことがなく、それによって大いに被害を受けるような、別の戦線を開く」可能性が警告されたことである。この「別の戦線」というのが何を指しているのか意図的に曖昧にされているが、米国やイスラエルの関係者、施設ないし権益に対する「テロ」を指しているように思われる。(11)でも、敵から賠償金を取ることができなければ、彼らの財産を破壊すると言明されていることからも、その可能性が否定できないだろう。
【参考】
「イラン:モジタバー・ハーメネイー師がイラン・イスラーム共和国の第3代最高指導者に選出」『中東かわら版』No.136。
(主任研究員 斎藤 正道)
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