中東かわら版

№139 バハレーン:淡水化プラントへの攻撃とパキスタンとの関係強化

 2026年3月8日、バハレーン内務省の公式アカウントは、Xに「イランは市民を標的とした攻撃を行い、ドローンの攻撃によって淡水化プラントが物的被害を受けた」と投稿した。一方、国営通信社である『Bahrain News Agency』の3月9日の報道では、シトラ地区を狙ったイランのドローン攻撃により、バハレーン市民32名が負傷し、うち4名が重体であると報じ、淡水化プラントへの攻撃を正面から取り上げなかった。3月10日の報道では、外務省はイランが民間人、住宅地、経済・石油施設、淡水化プラントを標的として攻撃を継続していると報じ、プラントが攻撃対象の一部であったと言及するにとどめた。

 他方、3月9日、『Bahrain News Agency』は、ハマド国王がパキスタンのムニール陸軍参謀総長と電話会談したと伝え、翌日10日にはザヤーニー外相が、パキスタンのダール外相と電話会談したと報じた。

評価

 バハレーンは常時水が流れる川や湖のない島国である。歴史的には地下水を利用してきたが、年平均降水量は70~80mm程度にとどまる(※東京の平均年間雨量は約1600mm)。現在、同国の飲料水は大部分を海水淡水化に依存しており、その比率はおおむね約90%だとされている。そのため今般のイランによる淡水化プラントへの攻撃は、バハレーンの水供給の根幹を脅かしかねない、極めて危険なものであった。

 しかし内務省がSNSに淡水化プラントへの攻撃を速報的に投稿した一方で、3月9日の国営通信社の報道ではシトラにおける民間人の被害を伝えているものの、淡水化プラントへの攻撃には直接言及していない。3月11日時点でも、国営通信社の報道レベルでは同プラントへの攻撃を正面から取り上げることはなく、プラントが攻撃対象に含まれていたことに一般的に触れるにとどまり、どのプラントが攻撃を受けたのか、被害がどの程度なのかといった詳細には踏み込んでいない。これは、淡水化プラントがバハレーンにとって極めて重要であるがゆえに、その詳細を公表することで国民の不安を過度に高めることを避ける意図があったとみられる。また、被害状況の詳細を明らかにすることで、イランに国内インフラの脆弱性を把握されることを避けようとした側面もあったと考えられる。

 他方、淡水化プラントへの攻撃を受けた翌日にパキスタンとの接触が報じられた。バハレーンの国王、外相がパキスタン側と接触する頻度はそれほど高くなく、多くとも年に3回程度である。

 攻撃を受けたタイミングで、連日パキスタン側と接触が図られたのは、軍事・安全保障協力の強化という側面があったと思われる。バハレーンは、王政側がスンナ派であるのに対し、国民の半数以上がシーア派である。スンナ派の体制を維持するため、バハレーンは同じくスンナ派であるパキスタンと軍事的関係を強化し、パキスタン人に国籍を与えるなどによってスンナ派の治安部隊や軍隊を維持してきた過去がある。

 バハレーンには米海軍第5艦隊および米海軍中央軍(NAVCENT)の司令部がある一方、今般の攻撃では同国にとって生命線ともいえる淡水化プラントが被害を受けた。言い換えれば、米軍だけでは重要インフラへの攻撃を完全には防ぎ切れない現実を示した。バハレーンの動きは、湾岸諸国が米軍による防衛を引き続き重視しつつも、米軍以外との協力も模索し、抑止力の補完を図る可能性を示唆している。

(研究員 平 寛多朗)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

|


PAGE
TOP