№133 クウェイト:イランによる攻撃が突きつけた2つの衝撃
- NEW2026湾岸・アラビア半島地域クウェイト
- 公開日:2026/03/04
2026年3月2日、クウェイト防空軍は、ハワッリー県ルマイシーヤおよびサルワー付近の海路を経由して同国に接近してきたドローンの大部分を迎撃することに成功したと発表した。
同日、『Kuwait Times』は、在クウェイト米国大使館から黒煙が上がっていると報じた。この件に関して、米国大使館からの発表はされていないが、クウェイト上空ではミサイルとドローンによるイランの攻撃の脅威が続いており、米国大使館には近づかないよう警告する声明が大使館側から出された。

(グーグルマップを元に筆者作成。赤印:米国大使館。黄色の印:米軍関連拠点。オレンジで囲った部分:ルマイシーヤおよびサルワー。地図はクウェイトの中部から東部を示したもの。都市機能が沿岸部の一帯に集中していることが確認できる。)
評価
今般のドローンによる攻撃は、イスラエル・米国によるイランへの攻撃に対して、イランが報復したものとみられる。今般のイランの報復は、クウェイトにとって大きく2つの脅威を示したと思われる。
第一に安全保障上の脅威である。クウェイトは国土が小さく、都市機能の大半がクウェイト市およびその周辺沿岸部に集中している。そのため、重要な施設が、その限られた都市部に集中する傾向がある。イランの攻撃を受けたと思われる、米国大使館はクウェイト市の中央付近に位置している。ドローンが迎撃されたルマイシーヤおよびサルワーは米国大使館に近い地域であり、住民や往来も多い地域である。また、米軍基地は都市部の郊外に位置している。
このような環境では、仮に攻撃そのものが迎撃されたとしても、残骸の落下や爆発、さらには「都市上空が攻撃対象となった」という事実自体が、市民に強い不安を与えやすい。つまり今般の攻撃は、クウェイトにとって都市機能が集中する事実上の中枢部に対する脅威が可視化された事例であり、同国の安全保障上の脆弱性を改めて印象付けたといえる。
第二に、労働力の脆弱性に対する脅威である。ハーバード大学の「経済アトラス」によれば、クウェイトは世界で30番目に豊かな国であり、多くの移民を抱えている。2024年の政府統計によれば、人口約490万人のうち68%以上が外国人であり、移民労働者がクウェイトの経済を支えている。クウェイトがこれまで労働者を引き付けてきた要因は「高い賃金と治安の安定」であった。もし仮に攻撃が常態化すれば、1990年の湾岸危機以降、多大な努力で保たれてきた「安全な国」という前提を揺るがし、外国人労働者の流入や定着に影響を及ぼす可能性がある。労働力の喪失は、クウェイト経済に深刻な影響を与えかねない。
今般の攻撃による直接的な大規模被害は免れたものの、迎撃という軍事的成功の裏で、クウェイト社会が受けた衝撃は小さくなかったとみられる。
(研究員 平 寛多朗)
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