中東かわら版

№131 オマーン:イランによるオマーン攻撃の意味

 2026年3月1日、オマーンの国営通信は、2機のドローンによってドゥクム港が攻撃を受けたと報じた。これにより、外国人労働者1名が負傷した。オマーンは、この攻撃を強く非難し、国家と住民の安全を脅かすあらゆる行為に対処すると表明した。

 (グーグルマップを元に筆者作成。赤印がドゥクム。)

評価 

 今般のオマーン攻撃は、米・イスラエルによるイラン攻撃に対するイランの報復の一部だとみられる。オマーンは、1980年に自国の軍事施設の使用を米軍に許可する協定に署名した最初の湾岸諸国であり、米国とのつながりが深い。特に、今回標的となったドゥクム港はアラビア湾/ペルシャ湾の外側にあり、ホルムズ海峡が封鎖されても航行可能であるため、米軍にとって戦略的価値は極めて高かった。そのようなことが要因となり、ドゥクム港はイランの攻撃を受けたと思われる。

 今般の攻撃は、2つの点で大きな意味を持つ。一点目は、アラビア湾/ペルシャ湾の制海権をめぐって、イランが自らの姿勢を示したことである。ホルムズ海峡が封鎖されたとしても、ドゥクム港は同海峡の外側に位置するため、その影響を受けにくい。したがって、同港を拠点としてホルムズ海峡に対する行動をとることが可能であった。そうした拠点が標的とされたことは、イランがホルムズ海峡の封鎖等をめぐって外部からの干渉を排除しようとする姿勢を示したものと言える。

 もう一点目は、イランが仲介国を標的とした点である。オマーンは、米国とイランの仲介国として機能してきた国である。2月6日には、2025年6月に中断された米国とイランの核開発問題に関する協議がオマーンの首都マスカットで再開されていた。さらに、オマーン国営通信は3月1日付で、オマーンのブーサイーディー外相とイランのアラーグチー外相が、地域の緊張緩和に向けて電話会談を行ったと報じている。こうした中で、米国とイランをつないでいたオマーンが攻撃対象となったことは、単なる対米報復にとどまらない意味を持つ。つまり、この攻撃は、イランが米国との間を仲介してきたルートを自ら損なう結果を招いたことを意味する。

 2025年6月にイラン・イスラエル間で起きた「12日間戦争」では、米国が仲介する形で停戦となった。今般のイスラエルによるイランへの攻撃では、その米国が参加している。イランはオマーンを攻撃したことで外交による出口戦略を放棄し、事態収拾をより難しくしたと言える。

(研究員 平 寛多朗)

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