№130 カタル:イランからドローン攻撃を受け、LNG生産が停止
- 2026湾岸・アラビア半島地域カタル
- 公開日:2026/03/03
2026年3月2日、カタル国営のカタルエナジー社は、ラアス・ラファーン工業都市及びメサイード工業都市にある同社の操業施設が軍事攻撃されたことを受け、液化天然ガス(LNG)と関連製品の生産を停止したと発表した。カタル国防省によれば、イランから発射されたドローン2機のうち、1機はラアス・ラファーン工業都市内の発電所を、もう1機はマサイード工業都市内の発電所に給水する貯水タンクを標的とした。現時点で人的被害は確認されていない。
評価
カタルは世界有数のLNG輸出国であり、2024年には米国やオーストリアに次ぐ、7800万トン(世界全体の19%)のLNGを輸出した(出所:GIIGNL)。また現在、カタル半島沖合に位置する「ノースフィールド(別名ノースドーム)・ガス田」の拡張計画を進めており、LNG年産能力を現在の7700万トンから1億4200万トンに引き上げようとしている。カタルはガス供給を通じて、国際ガス市場に多大な影響を及ぼすことができる点から、国際石油市場を舵取りするサウジアラビアと同等の影響力を持つと指摘されている。
今般のイラン発ドローン攻撃では、LNG生産施設そのものへの被害は報告されていないが、イランがカタルに対し、米国の対イラン作戦の停止を働きかけるよう迫る目的で、天然ガス産業に関わるインフラを再び標的として政治的圧力を強める可能性はある。
カタルのLNG停止の長期化は、国際ガス価格の高騰やカタル産LNG輸入国への経済的打撃を招く原因となる。カタルが生産停止によりLNG輸出を継続できなくなれば、世界のLNG需給は大きく崩れ、スポット価格が急騰する見通しである。また、カタルLNGの主要輸出先は中国(2024年:1870万トン)、インド(1140万トン)、韓国(867万トン)、パキスタン(700万トン)などのアジアが中心である。これらの国々はカタル産LNGの代替調達を迫られることから、取引価格が高騰したスポット市場で不足分を確保せざるを得ず、輸入コストの増大は避けられないだろう。
日本については、カタル産LNGの輸入量(2025年時点)が総輸入量の約5%(約340万トン)にとどまるため、カタルでLNG生産が停止しても、日本の需給への直接的な影響は上記アジア諸国に比べて、限定的である。一方、日本・韓国向けLNGのスポット価格指標である「JKM」は、2月27日に100万BTU当たり10ドルだった水準から、3月2日には13ドルまで上昇している。このまま価格上昇が続けば、輸入コストの増加を通じて電気料金の引き上げ圧力となる恐れがある。
【参考】
「中東:イラン情勢の緊迫化を受け、ホルムズ海峡が通航不可」『中東かわら版』No.127。
「カタルのLNG増産計画と中東域内情勢の影響」『中東分析レポート』R24-02。※会員限定。
(主任研究員 高橋 雅英)
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