中東かわら版

№129 ヨルダン:イスラエルを狙ったイランの弾道ミサイルを迎撃か

 2026年2月28日、ヨルダン軍は、ヨルダンの領土を標的としたドローンおよび弾道ミサイル計49機を迎撃したと発表した。このうち、「ヨルダン領土を狙った」弾道ミサイル13発は防空システムにより迎撃され、残る飛翔体も無力化された。

 同日、公安局は弾道ミサイルの残骸や破片の落下が54件報告され、警察の戦術部隊等が対応したと述べた。同局によれば、落下はアンマン、ザルカー、ジャラシュ、マダバ、イルビドの各県に集中した。なお、死傷者は報告されていない。

 

(グーグルマップを元に筆者作成。赤丸:破片が落下した県、青丸:米軍基地)

 

評価 

 今般ヨルダンで迎撃されたドローンと弾道ミサイルは、米・イスラエルによるイランの攻撃を受け、報復としてイランが発射したものである。報道によれば、イランは湾岸諸国の米軍基地を狙いミサイルを発射しているという。ヨルダンにも米軍基地があり、イランの標的となってもおかしくない。実際、2024年1月にはイランの支援を受けた組織が、ヨルダン北東部、シリア国境付近の米軍基地をドローンで攻撃し米兵3名を殺害している。

 しかし、今般の攻撃では米軍基地を標的とはしていないようである。報道された弾道ミサイルの残骸や破片の落下地点を見る限り、弾道ミサイルはおそらく南部から北部に向けて飛行したと思われる。少なくとも、米軍基地があるヨルダン東部に向けて発射されていない。弾道ミサイルは、ヨルダンを通過しイスラエルを目指していたと思われる。ドローンに関する情報は発表されていないが、同じくイスラエルに向けたものであろう。

 他方、ヨルダン軍は「ヨルダンの領土を狙った」弾道ミサイルと述べている。またヨルダン軍が迎撃を発表した日、ム―マーニー政府広報担当相も「ヨルダンの領土を狙った」弾道ミサイルを迎撃したと発表している。

 ヨルダン人の3分の2はパレスチナにルーツを持つと言われており、対イスラエル協力と受け取られ得る行動は非難を生じさせる可能性がある。実際、2024年10月にイランからイスラエルに向けて発射された弾道ミサイルをヨルダンが迎撃した際には、ヨルダン国内で政府に対して批判が生じている。こうしたことを背景に、実際はイスラエルを狙っていたとしても、「ヨルダンの領土を狙った」という表現を使用したとみられる。今般の迎撃は、イスラエル、イランに挟まれパレスチナ人を抱えるヨルダンの複雑な状況の一端を示すものとなっている。

(研究員 平 寛多朗)

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