中東かわら版

№128 イラン:ハーメネイー最高指導者が死亡

 2026年2月28日朝、イスラエル・米国は対イラン攻撃に着手し、イランのハーメネイー最高指導者を殺害した。殺害はまず、イスラエルのネタニヤフ首相が発表し、次にトランプ米大統領が発表した。翌3月1日早朝、イラン国営放送が最高指導者の死亡を確認した。

 『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、イスラエル時間朝6時、戦闘機が同国の基地から出撃し、イラン時間9時40分、ハーメネイー最高指導者のいる最高指導者事務所を爆撃した。爆撃で、ハーメネイー最高指導者のほか、パークプール革命防衛隊総司令官、ムーサヴィー統合参謀本部長、ナシールザーデ国防軍需相、シャムハーニー国防評議会書記らが死亡した。イスラエル・米国による攻撃後、しばらく動静が不明だったペゼシュキヤーン大統領は、動画でハーメネイー最高指導者の死を悼む声明を発表し、生存が確認された。

 同紙によると、米CIAは28日の朝にハーメネイー最高指導者を含む国防評議会の会合が開かれるとの情報を入手し、イスラエル側に通報、同日夜に予定されていた対イラン攻撃が前倒しで実行されたという。

評価 

 ハーメネイー最高指導者の死によって、イスラーム共和国体制が瓦解するわけではない。イスラーム共和国体制は高度に法制化・組織化された国家であり、その国家のトップが排除されたからといって体制が機能しなくなるわけではないからである。

 ハーメネイー最高指導者の死去に伴い、憲法にしたがい、大統領(ペゼシュキヤーン氏)、司法権長(モフセニー・エジェイー師)及び公益判別評議会が選ぶ護憲評議会イスラーム法学者1名の3人による暫定最高指導評議会が立ち上げられた。暫定評議会の一員を務める護憲評議会イスラーム法学者には、アリーレザー・アッラーフィー師が選ばれた。

 今後、最高指導者の選任を行う「専門家会議」(全88議員)が次期最高指導者を選出することになっている。専門家会議には、事前に次期最高指導者候補を選ぶ委員会が存在するとされる。専門家会議の会議は、全議員88名の3分の2以上(59名)が出席して成立し、出席議員の3分の2の賛成によって最高指導者が選出される。憲法上、最高指導者選出に時間的縛りは存在しないが、アラーグチー外相は数日以内に新たな最高指導者が選出されるだろうと述べた。

 過去の報道によると、次期最高指導者の有力候補として、ハーメネイー師の息子モジタバー師やアッラーフィー師が言及されてきた。モジタバー・ハーメネイー師は諜報分野で活動してきた人物で、これまで公の場に姿を現したことはあまりない。最高指導位の世襲化への懸念から、ハーメネイー師の息子である同師が次期最高指導者に就任することに否定的な見方もあるが、最高指導者の交替に伴う国内の混乱を最小限に留めるためには、彼が後継者になることが有効との見方もある。

 アッラーフィー師は、イラン・イスラーム共和国が認めるシーア派の「正統教義」を国外に普及させることを目的に、ハーメネイー師の肝いりで立ち上げられた「アル・モスタファー国際大学」の元学長で、現在、護憲評議会委員兼専門家会議第二副議長を務める。ハーメネイー師はかつて、アッラーフィー師を「管理能力の高い、新思考の真のイスラーム法学者」と称賛したことがあり、このことが彼が次期最高指導者の有力候補と目されるきっかけとなった。「管理能力の高い」は、憲法において最高指導者の資質の一つとして挙げられている表現である。

 両師とも、大統領や閣僚として国家運営を担ったことはなく、最高指導者に就任しても、国を有効に指導・監督することができるかどうかは不明である。

(主任研究員 斎藤 正道)

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