中東かわら版

№116 アラビア半島:「イランの民兵」がアラビア半島のアメリカ権益を脅迫

 イランとアメリカとの対立を契機に中東、アラビア半島一帯で軍事的緊張が高まる中、「イランの民兵」による新たな威嚇・脅迫が現れた。SNS上では、2026年1月26日付で「真実約束旅団」名義でアラビア半島のアメリカ権益への広汎な攻撃を行うと脅迫する声明が出回った。「真実約束旅団」は、イエメン紛争でアンサール・アッラーに与する立場からサウジ、UAE、アメリカを脅迫する声明を度々発信しており、最初の声明は2021年1月にUAEへの無人機攻撃をほのめかすものだった。また、同派は2022年2月のアブダビへの無人機攻撃を実行したと主張する声明を発表している。

 今般の声明では、アメリカの政権と、地域におけるアメリカの手先のテロリズム政策によって諸人民の安全な生活が侵されていると主張し、そのような振る舞いが続くならば紅海・アラビア湾(注:ペルシャ湾)からの石油搬出の阻止、アラビア半島のアメリカのエネルギー源の攻撃を行うと脅迫した。また、声明は、地域のアメリカ大使館を「ムスリム諸人民を攻撃対象とする作戦室」と決めつけ、それらを正当な攻撃対象にすると表明した上で、アラビア半島で活動する国際的な航空会社の活動を禁じることにより各地のアメリカ大使館を封鎖すると脅迫した。

評価

 「真実約束旅団」は、2021年1月以来7件の声明を発表した実績があるが、「8号」と番号が付された今般の声明は、これまでの同派の声明類発信の様式を踏襲したものとなっている。これまで同派による脅迫は、サウジ、UAEのほか、クウェイトとUAEに駐留するアメリカ軍の基地、アラビア半島で活動する諸企業と多岐に及んでいる。今般、アメリカとイランとの外交・軍事的緊張が脅迫の動機として挙げられ、脅迫対象として「アラビア半島からの石油輸出」、「地域のアメリカ大使館」と「国際的航空会社」が具体的に示されている点が新たな特徴といえる。一方、この種の声明類では、「声明類が本物であるか」と「声明類の内容が事実であるか」を分けて考えるべきであり、「真実約束旅団」の場合、実際に何らかの攻撃を実行したことを裏付ける証拠が乏しいことから、脅迫が現実のものとなる可能性は高くはないと思われる。ただし、脅迫の対象は実際に攻撃があった場合本邦も含め国際的な反響が大きいものであるため、情報収集と安全対策の観点からこうした声明類をないがしろにすることもできない。

(特任研究員 髙岡 豊)

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