№105 イラク:ヒズブッラー、アンサール・アッラーのテロ組織指定をめぐる騒動
- 2025イラク湾岸・アラビア半島地域
- 公開日:2025/12/10
12月4日、イラクの法務省が刊行する官報(2025年11月17日付4848号)に、「テロリスト資金凍結委員会」の2025年61号決定として、レバノンのヒズブッラー、イエメンのアンサール・アッラー(蔑称:フーシー派など)を含む24の個人・団体をテロ組織・テロリストに指定し、その資金を凍結するとの記事が掲載されていたことが明らかになった。これに対し、人民動員隊の民兵をはじめとする諸般の政治勢力から非難の声が上がり、一部では街頭で抗議行動が見られた。
「テロリスト資金凍結委員会」はこの問題について、テロ組織の指定はマレーシアからの要請を受け2021年の国連安全保障理事会決議に基づいて行ったものであるが、「イラクが指定に同意したのは「イスラーム国」とアル=カーイダに関与する個人・団体に限られる。公表されたリストは確認作業が完了する前のもので、問題になっている団体・党派は「イスラーム国」、アル=カーイダと関係するリストから除かれる」と釈明した。スーダーニー首相は、官報に掲載されたリストは事実に反するものであり、責任の所在を明らかにし、職務怠慢を問責する緊急調査の実施を指示した。また、大統領府も声明を発表し、ラシード大統領が問題の決定に関与したことを否定した。
評価
イランと親しい党派が与党の一角をなす一方で、アメリカとも密接な関係を持つイラク政府にとって、レバノンのヒズブッラー、イエメンのアンサール・アッラーの活動をどのように位置づけるかは極めて機微な問題である。アメリカ、イスラエル、アラビア半島の産油国などは両派をテロリストとして敵視して活動を取り締まり、イラク政府にも同様の行動を要求している。一方、イランに近しい諸派にとって、両派はかつて「抵抗の枢軸」を形成した「仲間」であり、2023年以来のイスラエルとの交戦で連携・連帯しただけでなく、相互の組織の編成、訓練や装備の提供の面でも関係があると信じられている。イラク政府としては、ヒズブッラー、アンサール・アッラーに対し、取り締まっても放任しても内政・外交政策の運営上重要な当事者の怒りを買いかねないことになり、今後この問題についてイラク政府が明確な態度をとる場合、それに先立ち同国の政府の構成や外交関係で重大な転換が起きるだろう。現在、イラクは国会議員選挙を経て次の首班指名のための院内会派形成の交渉が焦点となっており、本件が問題視されるのもそうした政局を反映したものでもある。
(特任研究員 髙岡 豊)
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