中東かわら版

№106 サウジアラビア:東部ジャーフーラ・ガス田開発の第1段階が完了

 2025年12月2日、サウジアラビア財務省は2026年予算に係る声明で、同国東部のジャーフーラ・ガス施設について、建設の第1段階が完了し、日量4.5億立方フィートのガス生産を開始することを明らかにした。同ガス田は、ガス埋蔵量229兆立方フィートを有する、湾岸地域最大の非在来型ガス田である。開発プロジェクトでは、ガス生産能力を第2段階(2027年頃)に日量11億立方フィートへ拡大し、最終の第3段階(2030年まで)には日量20億立方フィートに引き上げる計画となっている。

 ジャーフーラ・ガス田の開発状況については、12月10日にUAE・ドバイで開催された「中東ガス会議」において、国営サウジアラムコのアブドゥル・カリーム副社長(ガス部門担当)は、現時点では本格的な商業運転には至っていないものの、第1段階の試運転を開始したと説明した上で、2025年内に完全運転に移行する見通しを示した。

 

評価

 ジャーフーラ・ガス田開発プロジェクトは、約4年間に及ぶ準備期間と総額1000億ドルの投資を経て、まずは第1段階でのガス生産を実現した。サウジアラムコは同ガス田開発を、国内で増加する電力需要への対応にとどまらず、石油化学セクターにおける原料ガスの安定供給を確保する上でも不可欠な案件と位置付けている。今回の非在来型ガス田開発では、米国で蓄積されたシェールガス開発技術が本格的に活用されており、米国のハリバートン社や米ベーカー・ヒューズ社などが、フラッキング(水圧破砕)技術の提供を通じて重要な役割を果たした。

 今後、サウジアラビアにおけるガス増産が将来的にガス輸出へと結び付くのかが注目される。同国の天然ガス生産規模は、主要産ガス国であるカタルに迫る水準にあるものの、現時点では生産されたガスの全量が油田への再圧入や発電用・産業用燃料として国内で消費されている。

 こうした中、サウジアラムコは2030年までにガス輸出を開始する方針を示している。同社は非在来型のジャーフーラ・ガス田開発に加え、随伴ガスの回収・処理能力拡充を目的とするタナジーブ・ガス事業やファーディリー・ガス施設拡張事業を進めており、これらを通じて2030年までにガス供給能力を2021年比で約80%拡大し、日量約165億立方フィート(※年間換算で約170bcm相当)まで引き上げる計画である。

 ガス生産は着実に増加すると予想される一方、ガス輸出の実現には、発電用途のガス消費を抑えることも求められる。2024年末時点の発電比率でガス火力が全体の63%(288TWh)を占める中、人口増加に伴う冷房需要の拡大や、AI・データセンターなどエネルギー多消費産業の成長を背景に、発電電力量は今後も増加の一途をたどる見通しである。このため、サウジアラビア政府は電源多角化を目的に太陽光・風力発電を導入しており、2030年までに太陽光・風力発電設備容量は現在の約7GWから約58GWまで拡大する予定である。

 ただ、太陽光・風力発電によって代替される電源は当面、石油火力(発電比率で34%)が中心となる見通しである。このため、ガス火力への依存度が大きく低下するとは限らず、発電用ガス消費が減少に転じるかどうかは依然として不透明である。将来的にガス輸出の余力を確保するためには、計画中の原子力発電所を実際に建設するか、あるいは再エネ導入規模を現在の計画を上回る水準まで一段と拡大することが必要になると考えられる。

(主任研究員 高橋 雅英)

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