中東かわら版

№96 イラク:国会議員選挙の結果速報

 選挙管理委員会は、2025年11月11日に投票が行われた国会議員選挙(定数329)の最終結果を発表した。AFPによると主な選挙連合の獲得議席は以下の通り。

名称

獲得議席

特記事項

建設と開発連合

46

代表はスーダーニー首相

法治国家連合

29

代表はマーリキー元首相。前回の獲得議席は37

サーディクーン運動

27

主な加盟団体は、アサーイブ・アフル・ハック。前回の獲得議席は15

バドル機構

21

前回の獲得議席は16

国民国家勢力同盟

18

代表はアンマール・ハキーム。前回の獲得議席は4

権利運動

6

主な加盟団体はヒズブッラー部隊。前回の獲得議席は5

進歩リスト

27

代表はハルブーシー元国会議長。前回の獲得議席は27

クルディスタン民主党(KDP)

26

前回の獲得議席は31

クルディスタン愛国連合(PUK)

15

前回の獲得議席は17

新世代運動

3

前回の獲得議席は9

評価

 スーダーニー首相の与党が最多の議席を獲得したが、イラク制度のもとでは「選挙で最多の議席を獲得した連合」ではなく、「選挙後に最大会派を形成した連合」が首相を輩出する。このため、選挙に参加する各党派は、選挙後の会派形成で発言力・影響力を確保できる程度の議席の獲得を目標とし、いずれの党派・選挙連合にも選挙の段階で全国規模で議席を獲得し多数派を得る意思と能力は見られない。今後、「最大会派」を形成する合従連衡と、諸会派間の交渉を通じて新政府が発足するまでには長時間を要するとみられている。このような制度・運用の結果、有権者は選挙を通じた与党の実績への評価や次の政権の選択のような意思表明ができない状態に置かれている。

 前回の選挙(2021年)で最多議席を獲得したサドル派は、選挙後の最大会派形成の争いに敗れた後、ボイコットと街頭抗議戦術に転じたが、今回は選挙そのものをボイコットした。同派のボイコットにもかかわらず、投票率は前回の44%を上回る56%を記録した。有権者への影響力や今後の政局への発言権などの面で、サドル派こそが今回の選挙の最大の敗北者とみなす評価もある。一方、「人民動員隊」に参加する民兵を擁する諸派は、前回の選挙では敗北したが今回はサーディクーン運動、バドル機構、権利運動などが議席を増やした。「イランの民兵」とも評される民兵諸派の武装解除問題は、アメリカ、イランとの関係とも連動する重要な問題であり、議席を増やした諸派の発言力が増せばこの問題がさらに紛糾することとなるだろう。

(特任研究員 髙岡 豊)

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