№97 アフガニスタン:ターリバーン政権、貿易におけるパキスタンへの依存脱却を模索
2025年11月12日、アフガニスタン・ターリバーン政権のアブドルガニー・バラーダル副首相代行(経済担当)は、パキスタンとの貿易ルートは商業関係者のみならず、アフガニスタン国民にも損害を生じさせるとし、パキスタンに代わる輸出入のための代替ルートを早急に選択するよう求めた。同副首相代行はさらに、医薬品の輸入業者に対し、「低品質」のパキスタン製医薬品の輸入を3カ月以内に停止し、同国にある口座を閉じるよう要求した。
ターリバーン政権とパキスタンの対立が続く中、パキスタンはアフガニスタンとの国境を封鎖してターリバーン政権への圧力を強めているが、同政権はイラン及び同国を通じた他国との通商関係の拡大に活路を見出そうとしている。ターリバーン政権の商業省報道官がロイター通信に述べたところによると、過去6カ月間のイランとの貿易額は16億ドルに達し、この額はパキスタンとの貿易額11億ドルを上回っているという。
11月15日、ターリバーン政権のアジージー商業相代行はミーラク国境を通ってイランのシースターン・バルーチェスターン州ヒールマンド県を訪問し、同州知事やイラン経済関係者と、特にミーラク国境を通じた両国の貿易拡大に向けた方策について話し合った。同州南部には、インドが開発を進めるチャーバハール港があり、イランはチャーバハールとアフガニスタンを結ぶ鉄道の建設を進めてきた。
これに先立つ11日には、アフガニスタン・ファラーフ州知事がイランの南ホラサーン州マーヒールードを訪れ、同州知事と会談している。
ターリバーン政権はまた、空路を通じたインドとの貿易拡大も目指している。16日には、アフガニスタン国営航空会社のアリアナ・アフガン航空は、同日からインド・デリーとの貨物輸送費を割引し、輸出には1キロごとに1ドル(従来は2ドル)、輸入には80セント(従来は1.85ドル)に値下げした。アフガニスタンからインドへの空路での主な輸出産品は、果物やサフラン、絨毯などで、インドからアフガニスタンへの輸入は主に医薬品や衣料品だという。アリアナ航空によると、現在デリーとカーブルの間では週に3便の貨物機が往復しているが、需要の高まりにより近く7便に増発される予定だという。アリアナ航空は現在6機の機体を保有しているが、新たな機体の購入に向けてトルコやUAE、ウズベキスタン、香港の企業と接触しているとされる。
評価
パキスタンのアーシフ国防相は、ターリバーン政権のこうした動きに対し、「パキスタンにはいかなる損害も生じない」として余裕を見せているが、パキスタン・メディアはアフガニスタンと国境を接するパキスタンのハイバル・パフトゥンフワ州の商業関係者の話として、アフガニスタンとの国境封鎖によってパキスタン側に大きな経済的損失が生じていると報じている。他方、アフガニスタンからパキスタンに輸出される果物などの農産物が国境で留め置かれ、腐ってしまうという被害が生じている。
またアフガニスタン医薬品・医療機器輸入業者連合の理事長も、パキスタンからの医薬品の輸入停止を求めるバラーダル副首相代行の要求に対し、業者はすでに数百万ドルの輸入代金をパキスタン側に支払っており、3カ月以内にパキスタン口座を閉じることは困難だとの見方を示している。同理事長によると、アフガニスタンの輸入する医薬品の6割以上はパキスタンからのもので、残りの3~4割はインド、トルコ、バングラデシュ、イラン等からのものだという。すでにターリバーン政権によって、医薬品の入った300個のコンテナがカンダハールの税関で留め置かれており、そのためにアフガニスタンにおける医薬品価格が上昇しているとされる。
11月6日からトルコ・イスタンブルで、トルコ及びカタルを仲介国としたパキスタンとターリバーン政権との3回目となる和平交渉が実施されたが、交渉は決裂していた。交渉の直前には、パキスタン軍とターリバーン政権の間で交戦があり(ターリバーン側はパキスタンへの発砲を否定)、アフガニスタンの病院関係者の話によると、2名が死亡する事案が生ずるなど、両国の紛争・対立が収束するめどは立っていない。両国の紛争・対立は確実に、両国の経済・市民生活に悪影響を及ぼしている。
【参考】
「アフガニスタン:ターリバーン政権とパキスタンの間で停戦が合意」『中東かわら版』No.80。
(主任研究員 斎藤 正道)
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