№85 イラン:シャムハーニー最高指導者政治顧問の娘の豪華結婚式の動画が流出
- 2025湾岸・アラビア半島地域イラン
- 公開日:2025/10/23
アリー・シャムハーニー最高指導者政治顧問(国防評議会最高指導者名代)の娘の結婚式の動画がSNSに流出し、イラン人の話題をさらっている。10月18日頃からSNSに出始めた動画からは、シャムハーニー氏の娘セターイェシュ氏は胸元が大胆に開いた純白のドレスを着用し、父と腕を組んで夫(マフディー・エルファーニー氏)のもとに歩み出るなど、極めて「西洋風」の結婚式が開かれた様子がうかがえる。なお、同様にSNSに流出した結婚式の招待カードには、彼女の名前としてイスラーム風の「本名」ファーテメではなく、ペルシア語の「通り名」である「セターイェシュ」が書かれている。
動画にはイスラームで認められた服装であるヘジャーブを着用した女性に混じって、ドレスを着て肌をあらわにしたヘジャーブ未着用の女性たち(そのうちの一人は、シャムハーニー氏の妻と思われる)も映っている。この動画には、シャムハーニー氏とエルファーニー氏以外の男性は見当たらないが、ヘジャーブ未着用の女性たち(その中には写真撮影係と思しき女性たちもいる)全員が、男性であるシャムハーニー氏とエルファーニー氏の近親者(マフラム)である可能性はほぼないだろう(伝統的なイスラームの規範では、女性はヘジャーブを着用せずに近親者以外の男性の前に出ることはできない)。
この動画は、イラン人SNSユーザーの間で、過去1週間で最大の話題となっている。10月20日付のあるメディアの調査によると、「シャムハーニーの娘の結婚式」及びその類似の表現でのGoogle検索は1日で10万回を超えた。「X」でも結婚式の動画は5万4千件以上のツイート/リツイートが行われ、44万件の「いいね」が付き、1450万回表示された。「テレグラム」では2600万回表示され、「インスタグラム」では5600万回以上表示された(X及びテレグラムでは、ペルシア語のページのなかで表示回数が最も多かった)。
イラン国内で使用されているメッセージング・アプリであるEitaaでも400万回以上表示されており、10月14日に死亡した有名映画監督のナーセル・タグヴァーイー氏に関する記事の表示の4倍以上だったという。
評価
セターイェシュ氏の結婚式は昨年4月に、テヘラン北部の最高級ホテル「エスピナス・プラス」のホールで開かれた。ある報道によると、結婚式の費用は14億トマーンだったという。当時のレート1ドル約60万リヤールで計算すれば、約2万3000ドルだったことになる。その当時からすでに、極めて豪華な結婚式が開かれたとして、一部から批判の声が出ていた。例えば、陰謀論や救世主待望論で一部から「教授」と慕われている強硬保守派の若手論客ラーエフィープール氏は、「経済制裁に耐え忍んでいる国民」を前にして、「国内で最も豪華で最も値段の張るホール」で体制の要職を務める人物の娘が結婚式を挙げることなどどうしてできるのかと非難していた。
イラン国内メディアでは、1年半前の結婚式の動画が今になって流出したのは、シャムハーニー氏を政治的に葬り去るためのイスラエルの諜報機関モサドによる「テロ」によるものだとして、同氏を擁護する向きもあるが(実際、イスラエル外務省は自身のインスタグラムのページに、動画を引用しつつ、ペルシア語で「ヘジャーブ強制はイランの一般国民に対してだけということ?」との文章を載せている)、ハーメネイー最高指導者から要職を任されてきた国の責任者がイスラーム的にも問題のある贅沢な生活をしていることは「批判に値する」との声も、保守派のメディア関係者から挙がっている。
革命防衛隊傘下の民兵組織「バスィージ」に近い強硬保守派の通信社「大学生通信」(「イラン学生通信」とは別)は、この動画を見て社会は動揺していると指摘したうえで、「マフラム(近親者)と非マフラム(の男女の混交)を守っていないあなたに、どうして国民に対してヘジャーブを守るよう呼びかけることができるのか」と辛辣に批判している。先述のラーエフィープール氏をはじめとする若手強硬保守派による、シャムハーニー氏等の「エスタブリッシュメント」への攻撃の一環として、動画が流出した可能性もある(ラーエフィープール氏は、汚職疑惑の多いガーリーバーフ国会議長批判の急先鋒でもある)。
シャムハーニー氏は、国防軍需大臣や国家安全保障最高評議会書記などを歴任してきた体制内の大物政治家の一人であるが、同氏の近親者たち、特に息子のモハンマド・ホセイン氏は、国際的な制裁を受けているイランやロシア産の原油の「密輸」で莫大な資産を築いていることが、米財務省の報告書や西側メディアの報道で伝えられている。制裁の強化によってイラン国民の生活は困窮する一方、一部の体制関係者は密輸によって多大な利益を得ているとされる。質素でイスラーム的な生活スタイルを唱道し、欧米諸国への「抵抗」を訴える体制の重鎮シャムハーニー氏の娘の豪奢な「西洋風」結婚式は、経済的苦境にあえぐ一般国民の怒りを煽る可能性がある。
【参考】
「イラン:ペゼシュキヤーン大統領が議会担当副大統領を解任」『中東かわら版』No.5。
(主任研究員 斎藤 正道)
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/








.png)
.jpg)