№77 UAE:新たなギガソーラー事業が始動
- 2025湾岸・アラビア半島地域アラブ首長国連邦
- 公開日:2025/10/16
2025年10月10日、エミレーツ水・電力公社(EWEC)は、アブダビ首長国ザフラ地域で新設される「ハズナ(Khazna)」太陽光発電所プロジェクトの運営主体として、UAEの再エネ企業「マスダル」とフランスのエネルギー企業「エンジー」を選定した。ハズナ太陽光発電所は1.5ギガワット(GW)の発電設備容量を備え、2027年までに完成する予定である。稼働後はUAE全土で約16万世帯に電力を供給し、アブダビ首長国における年間の二酸化炭素(CO2)排出量を240万トン以上削減すると見込まれている。
評価
UAEは2010年代よりクリーンエネルギーの普及に注力しており、2023年7月に更新された「国家エネルギー戦略2050」では、2030年までの太陽光発電の導入目標を14.2GWから19.8GWに引き上げた。アブダビ首長国ではすでにヌール太陽光発電所(1.17GW)やザフラ太陽光発電所(2GW)が稼働し、今後はアジュバーン太陽光発電所(1.5GW)、ザッラーフ太陽光発電所(1.5GW)、さらにバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)を併設した5.2GW規模の太陽光発電所の建設も予定されている。
またドバイ首長国でも、大規模太陽光発電所「ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム・ソーラーパーク(MBR Solar Park)」が6期にわたって建設され、2025年6月時点の発電設備容量は3.8GWに達した。ドバイ電気水道局(DEWA)は現在、第7期の建設準備を進めており、同フェーズは2027~2029年に段階的に稼働を開始する予定である。完成後。MBR Solar Parkの総発電容量は7GWを超える見通しである。
新規の太陽光発電事業で注目されるのは、中国企業が設計・調達・建設(EPC)契約を一手に引き受けるかどうかである。中国企業はモジュール、セル、ウエハー、多結晶シリコンなど太陽光関連部品の世界市場で7割以上のシェアを占め、事業コストの抑制に成功している。こうした価格競争力を背景に、UAEの太陽光発電プロジェクトでは、中国CMECや中国HDEC、中国電力建設(パワーチャイナ)、上海電力といった複数の中国企業が建設契約を獲得してきた。この点を踏まえると、UAEが太陽光発電プロジェクトを拡大すればするほど、中国企業が得られる経済的利益は更に大きくなる可能性がある。
【参考】
「UAE:太陽光エネルギーの24時間供給に向け、大規模なエネルギー貯蔵計画を発表」『中東かわら版』2024年度No.119。
(主任研究員 高橋 雅英)
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