№33 イスラエル:イランとの停戦を受け、沖合ガス田での生産が再開へ
2025年6月25日、イスラエルのエネルギー省はイランとの停戦を受け、操業停止中だった2つの沖合ガス田での生産再開を各企業に命じた。リバイアサン・ガス田とカリシュ・ガス田は、イスラエル・イラン間の交戦による情勢悪化を理由に、同月13日から操業が停止していた。
リバイアサン・ガス田事業を運営する米国のシェブロン社は、リバイアサン及びタマル両ガス田から、イスラエル国内や周辺諸国(エジプト・ヨルダン)に全量のガスを供給していると発表した。また、カリシュ・ガス田事業に参加する英国拠点のエナージアン社は、同ガス田の操業再開に向けて取り組んでいると発表した。
各企業によると、約2週間の操業停止による損失額は、リバイアサン・ガス田で 1200 万ドル、カリシュ・ガス田で3900万ドルと推定される。
評価
イスラエル沖合のガス田事業については、これまでも地域情勢の悪化により、操業が度々停止してきた。2023年10月のガザ地区での戦闘発生後、シェブロン社は安全性に関する懸念を理由に、タマル・ガス田での生産と、イスラエル・エジプト間の東地中海ガスパイプラインの操業を約1カ月間停止した。これにより、イスラエルのエジプト向けガス供給量が契約上の供給義務量と比べ、16%減少した。また、2024年10月にイランがイスラエルを攻撃した後も、シェブロン社は予防措置として、リバイアサン及びタマル両ガス田の生産を数日のみ停止した。
今回のイスラエル・イラン間の交戦により、イスラエルのミサイル防衛システムによる迎撃が不十分であったことは、ガス田事業継続にとって不安要素となる。この先、両国間での戦闘が再燃すれば、イスラエルでのガス田拡張計画や新規開発計画が更に遅延する可能性がある。
【参考】
「ガザ危機とイスラエルのエネルギー安全保障」『MEIJコメンタリー』No.10。
「イラン:トランプ米大統領がイラン・イスラエル間の停戦を発表」『中東かわら版』No.31。
「イスラエル:アゼルバイジャンとの新たなガス田開発事業」『中東かわら版』2024年度No.137。
「イスラエル:沖合で新たなガス田開発事業の始動」『中東かわら版』2024年度No.50。
(主任研究員 高橋 雅英)
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