中東かわら版

№29 GCC:イラン核施設破壊による放射能汚染はないと発表

 2025年6月22日、米軍によるイラン国内の核施設3カ所の攻撃を受けて、GCC各国はこれによる放射能汚染は確認されていないと発表した。オマーン環境庁、カタル環境・気候変動対策省、クウェイト国家警備隊、サウジアラビア原子力・放射線規制委員会、バハレーン環境最高委員会、UAE連邦政府原子力規制庁の他、GCC緊急対策センターが、各国及び湾岸地域の空域・水域における放射能の異常値は検出されていないと断定した。イラン含め、本稿執筆時点で放射能汚染を報告している国はない。

 

評価

 2023年10月にガザ戦争が始まって以降、イスラエルと米国がイランの包囲を呼びかける中、GCC諸国は逆にイランとの外交チャンネルを維持していることを強調し続けた。GCC諸国としては、これによってイランを過度に追い詰めることを避け、緊張のエスカレーションを防いできたが、結果としてイスラエルと米国は、周辺国の意向を汲まない強硬姿勢を選択した。

 GCC諸国とすれば、たとえイランとの良好な外交関係を維持するとしても、同国の核兵器製造能力は自国に対する安全保障上の脅威である。この点で、手段やプロセスはさておき、イスラエルと米国がイランの核施設を稼働不可能にする事態は歓迎できる。但し、これによってイランがさらなる強硬な措置をイスラエル及び域内の米国権益に対して講じ、地域が不安定化すれば、GCC諸国はその影響から免れない。イランとイスラエルの交戦がまだ続くと予想される中、GCC諸国とすれば、どのような形で損害を被るかへの不安と警戒は当面続くことになる。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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