中東かわら版

№139 イスラエル:宗教右派政党「ユダヤの力」が政府復帰を発表

 ベン・グヴィル元国家安全保障相が党首を務める宗教右派政党「ユダヤの力」(6議席)は、ガザ地区への攻撃再開を受け、ネタニヤフ首相率いるリクードとの共同声明で、ユダヤの力の政府復帰で合意したことを発表した。ユダヤの力は1月18日、ハマースとの停戦合意への反対表明として政府を離脱した。復帰発表に際しベン・グヴィル元国家安全保障相は、「政府から撤退した際に述べた通り、イスラエルはガザでの戦闘を再開しなければならない」「これはハマースを壊滅させ、人質を連れ戻すための正しく、道徳的で、倫理的で、最も正当な措置である。ハマースの存在を認めてはならないし、壊滅させなければならない」と述べた。

 ユダヤの力の復帰と同時に、同党の元閣僚の再任についても合意がなされた。閣僚3名(ベン・グヴィル国家安全保障相、エリヤフ・エルサレム事案・遺跡担当相、バッセルラウフ辺境・ネゲブ・ガリラヤ開発相)の離脱後、空席となった3ポストはカッツ観光相が臨時で務めている。なお閣僚3名の復帰は、今後内閣と議会の承認が必要となる。

 

評価

 最近のイスラエル国内の各種世論調査が伝える限り、ネタニヤフ首相及びリクードへの支持は軒並み低下している模様である。またネタニヤフ首相が側近の利益相反の捜査を続けるシンベト長官の解任を発表したことに対し、野党議員から反発の声が強まっている。こうした中、戦闘再開により有事状況を作りだすことで、ネタニヤフ首相としては少しでも風向きを変えたいとの思いがあっただろう。

 また先立つ3月13日にはサール外相が、自身が党首を務める右派政党「新たな希望」(4議席)が解散して、自身含む党員約2400人がリクードに合流すると発表した。解散・合流のプロセスが完了するのは来年のようだが、ユダヤの力の復帰とあわせて、連立与党とネタニヤフ首相にとっては政権維持のための追い風となる。ガザ地区への攻撃再開は、以上のような内政面での動きも後押しの材料になったと考えられる。

 

【参考】

「イスラエル:停戦合意を受けた宗教右派勢力の政府離脱」『中東かわら版』No.115。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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