中東かわら版

№123 UAE:ムハンマド大統領のフランス訪問、フランスAI産業への大規模投資

 2025年2月6日、ムハンマド大統領はフランスへの実務訪問を行った。今般のUAE訪問団には、タフヌーン・ビン・ザーイド国家安全保障顧問やハルドゥーン・ムバーラク執行関係庁(EAA)長官兼政府系投資会社「ムバダラ」CEO、ジャービル産業・先端技術相兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)総裁、ファイサル・バンナーイ戦略研究・先端技術担当大統領顧問といった、投資や先端技術分野での主要人物が含まれた。

 ムハンマド大統領はフランスのマクロン大統領と会談し、気候変動対策やエネルギー、先端技術、人工知能(AI)の分野で協力を拡大していく点を確認したほか、中東地域情勢や国際情勢についても協議した。また両首脳の立会いの下、ハルドゥーン・ムバーラクEAA長官とフランスのバロ外相がAIにおけるUAE・フランス協力枠組みに係る協定に署名した。同協定に基づき、UAE 政府系投資会社「MGX」がフランスでの1GW(ギガワット)規模のAIデータセンター設置やAIチップ調達に向け、300~500億ユーロを投資する予定である。

 

評価

 フランス・UAE関係は2000年代後半より、アブダビでの仏軍基地の設置や仏トタルエナジーズ社の資源権益、ソルボンヌ大学アブダビ校及びルーブル美術館別館の開設を通じて、多岐にわたる分野で発展してきた。近年ではフランスからUAEへの武器輸出が際立っており、2021年にはUAEが仏ラファール戦闘機80機を購入する契約(総額166億ユーロ)を締結した。UAEは安全保障パートナー国の多角化を目指す中、フランスが国連安保理常任理事国かつ核保有国である点を重視し、フランスとの関係強化を図っている。

 今般、UAE・フランスともに自国の成長産業と位置付けるAI産業でも協力を深めることで、結びつきを更に強めようとしている。UAEは国内でアラビア語初の独自言語モデル「ファルコン」を開発し、世界的に普及させることを目標としている。この点から、フランスのAI産業への投資に紐づける形で、同モデルの導入も推し進める可能性がある。フランス以外の投資先では、2024年10月にMGX社が米国のブラックロック社及びマイクロソフト社と連携し、米国でのデータセンター設置や電力インフラ整備に300億ドルを投資すると発表した。UAEは資源収入から得た潤沢な財源を活用し、国内でAI産業の発展に注力しながら、将来的な国際展開を見据えて、今後も投資先を拡大させていくと考えられる。

(主任研究員 高橋 雅英)

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