中東かわら版

№122 UAE:2024年の日本の最大の原油調達先に

 2025年1月30日発表の財務省貿易統計によれば、2024年の日本にとっての最大の原油調達先は、UAEとなった。UAEからの原油輸入量は前年比で2%増加し、総輸入量で43.7%を記録した。また第2位がサウジアラビア(約40%)、第3位がクウェイト(約7%)、第4位がカタル(約4%)となり、他の湾岸諸国も重要な原油供給国である。原油調達における日本の中東依存度は約95%である。

 

評価

 日本にとっての最大の原油調達先は長年サウジアラビアであったが、同国からの原油輸入量は2017年時の約7500万リットルから、2024年には約5500万リットルまで減少した。一方、UAEからの原油輸入量は増加傾向にあり、同期間に約4450万リットルから約6000万リットルまで増加した。UAEのアブダビ首長国では、日本企業が海上及び陸上油田の権益を保持し、原油の自主開発・生産を行っている。サウジアラビアが他国による開発参入を認めていない点を踏まえると、日本が油田開発に直接関与できている国として、UAEの重要性は高まっている。

 産油国のUAEにとって、原油輸出は最大の外貨獲得源である。資源別輸出額における原油の割合(2021年時)は48%にのぼり、石油製品や天然ガスを大きく上回る。このため、石油需要が徐々に減少している日本市場で原油輸出量を維持、拡大できていることは、UAEにとって大きな経済的メリットとなっている。

 一方、その他の主要原油輸出先である中国やインドで、UAEは他産油国とのシェア争いを強いられている。たとえばウクライナ危機下、欧米主導の対ロシア制裁に同調していない中国とインドがロシア産原油の調達を増加させた。その結果2024年、原油輸入量に占めるロシア産のシェアは中国で20%、インドで37%を記録したのに対し、UAE産は中国で6%、インドで8%に留まった(出所:中国海関総署及びインド商工省)。ただ、トランプ政権下でより強力な対ロシア制裁や対イラン制裁が発動され、インドと中国がロシア産やイラン産の原油を買い控える状況が生まれれば、UAEが両国への輸出量を増加させることが可能となるだろう。

(主任研究員 高橋 雅英)

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