№119 UAE:太陽光エネルギーの24時間供給に向け、大規模なエネルギー貯蔵計画を発表
- 2025湾岸・アラビア半島地域アラブ首長国連邦
- 公開日:2025/01/30
2025年1月14日、再エネ企業のマスダル社とエミレーツ水・電力公社(EWEC)は、太陽光エネルギーの安定供給に向け、バッテリーエネルギー貯蔵システム (BESS)を建設する計画を発表した。同事業では、発電設備容量5.2ギガワット(GW)の太陽光発電所と19ギガワット時(GWh)のBESSを組み合わせること、太陽光由来の電力を24時間供給できる体制を構築する予定である。
マスダル社は17日、太陽光発電所及びBESSの建設に向け、中国電力建設(POWERCHINA)とインドのラーセン・トゥブロ社それぞれと設計・調達・建設(EPC)契約を締結した。また太陽光モジュールの供給会社に中国のJAソーラー社及びジンコソーラー社を、BESS関連部品の供給会社に中国のCATL社を選定した。
評価
UAEは他産油国に先駆けて太陽光発電所の導入を決定したり、アブダビ首長国やドバイ首長国でギガ級の太陽光発電を設置したりするなど、クリーンエネルギーの普及に注力している。一方、太陽光発電は、日中のみの電力供給に限られ、発電量の調整が困難であるなどの課題を抱えている。このため、UAEはBESSを新設して、夜間でも太陽光発電による電力供給を可能にすることで、今後予想される人工知能(AI)産業の拡大に伴う電力需要の増加に対応する計画である。
BESS計画に関する注目点は、多くの中国企業が建設や部品供給を担うことである。UAEの太陽光発電事業では2010年代前半、スペインやイタリアの企業が手掛けていたものの、この数年は中国企業の参入が相次いでいる。中国企業は大部分の太陽光関連部品(たとえばモジュール、セル、ウエハー、多結晶シリコン)の世界シェアで7割以上を占め、事業コストを抑制することで、大規模事業の受注に成功してきた。UAEにとっては、中国企業による低価格化が電気料金の引き下げにつながるメリットになっていることから、UAEはクリーンエネルギー分野における中国の役割に大きな期待を寄せていると考えられる。
(主任研究員 高橋 雅英)
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