№112 オマーン:約30年ぶりに銅の輸出が再開
- 2025湾岸・アラビア半島地域オマーン
- 公開日:2025/01/08
2025年1月2日、オマーン鉱物開発(MDO)は約30年ぶりに銅の輸出が再開したことを発表した。今回、北バーティナ県スハールにあるラサイル銅鉱山で採掘・処理された約900トンの銅精鉱が、スハール港から初出荷された。ラサイル銅鉱山での生産量は年平均50万トンが見込まれている。
また、MDOは2026年までに同県リワーにあるバイダー銅鉱山での操業も開始する予定である。ラサイル及びバイダー両銅鉱山での埋蔵量は、合計約278万トンと推定される。
評価
オマーンは1983年にスハール近郊で銅の採掘・精錬を本格化させたが、1994年に鉱床が枯渇したため、それ以降は銅精鉱(※製錬に適するように鉱石中の不純物を除去したもの)を輸入し、精錬後に輸出する事業を展開してきた。その後、新たな銅鉱山を発見し、採掘事業を進めたことで、約30年ぶりに国産銅の輸出再開を実現させた。
銅輸出の再開は、オマーンにとって経済的メリットとなる。オマーン経済は他の湾岸産油国と同様、石油収入に依存しているが、脱炭素化の潮流の中で石油需要の先行きが不透明である。また石油市場の供給過剰状態が当面続く見通しであるため、増収に大きく関係する国際原油価格が劇的に上昇する可能性は低い。こうした中、オマーンは利用継続が見込まれる天然ガスの輸出に注力するとともに、新たな財政収入源として鉱物資源の輸出を拡大させる方針である。特に、銅は電気自動車(EV)や半導体、送配電線などに使われ、この先も需要増加や高価格が期待できる。
今後増産されるオマーン産の銅は中国に輸出される可能性が高いと考えられる。中国は2023年の銅生産量で、チリ(2023年の生産量500万トン)やペルー(260万トン)、コンゴ民主共和国(250万トン)に次ぐ、世界第4位(170万トン)であった(出所:米国地質調査所)。一方、銅精錬量では第1位(1200万トン)となり、中国が世界各地の銅権益を取得して自国への販路を確立することで、国際的な銅供給網を握ることができている。オマーンにとって中国は最大の石油輸出先であり、長年の石油取引を通じて良好な関係が維持されてきた点から、銅についても、オマーンは中国向け輸出を優先していくと予想される。
【参考】
「オマーン:LNG増産計画を発表」『中東かわら版』No.55。
(主任研究員 高橋 雅英)
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