№110 カタル:13年ぶりとなるシリアとの国交再開
- 2024湾岸・アラビア半島地域カタルシリア
- 公開日:2024/12/24
2024年12月15日、カタルはダマスカスの在シリア大使館業務を再開した。臨時代理大使にはハリーファ・アブドッラー・マフムード・シャリーフ氏が任命された。これを経て23日、ムハンマド・フライフィー外務担当国務相はシリアを訪問し、ダマスカスでアフマド・シャラ・シャーム解放機構(HTS)指導者と会談した。
会談を通じて、フライフィー国務相は、13年ぶりとなるカタル・シリア間のハイレベル会合の意義を強調しつつ、カタルがシリアの主権維持、直行便の就航再開、ダマスカス国際空港の操業及び各種商業便の再開支援、エネルギー・インフラ・港湾分野への投資、公正・自由・発展・平和な統治のための国家機構の整備のための支援を申し出た。
評価
シリア内戦を通じ、カタルはアサド政権を最も強く非難してきた周辺国の一つであり、トルコとともにヌスラ戦線(現HTS)を含む反体制諸派を支援してきた。2023年5月にシリアがサウジアラビア等、他のアラブ諸国との関係改善を経てアラブ連盟に復帰する際も、足並み一致を優先して異議を唱えることはなかったが、シリアとの国交再開には拒否する姿勢を示してきた。
こうした事情から、カタルにとってアサド政権の転覆とHTSを中心とする反体制勢力の政権獲得は望ましい事態であり、投資が成功したとも言える。シリア新体制との協議に関しては、シリア北部のクルド系民兵組織・シリア民主軍(SDF)への対応をめぐり、中東諸国の中ではトルコが真っ先に接触を図った。その後、サウジアラビアがHTSと接触を図る前にトルコと協議する等、シリア新体制との関係構築をめぐってトルコがプレゼンスを発揮している状況だ。トルコの盟友であるカタルとしては、現下のシリア情勢によって自国の域内プレゼンスを発揮する好機を迎えている。
(研究主幹 高尾 賢一郎)
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