№96 アルジェリア:内閣改造(第2次ラルバーウィー内閣)、軍参謀総長の入閣
2024年11月19日、タブーン大統領は内閣改造を行い、新たな閣僚を任命した。2023年11月に首相職に就任したラルバーウィー首相は再任され、外相やエネルギー相など主要閣僚の多くが留任した。国防相はタブーン大統領が引き続き兼務する一方、今回の内閣改造では、シェングリーハ・アルジェリア人民国軍(ANP)参謀総長が国防相付特命相に就任し、入閣を果たした。第2次ラルバーウィー内閣の閣僚リストは、以下のとおりである。
表 第2次ラルバーウィー内閣の閣僚リスト
ナディール・ラルバーウィー |
首相 |
2023/11~ |
サイード・シェングリーハ |
国防相付特命相 |
ANP参謀総長(2019/12~) |
アフマド・アッターフ |
外務・在外自国民コミュニティー・アフリカ問題相 |
2023/3~ |
ムハンマド・アルカーブ |
エネルギー・鉱業・再生可能エネルギー相 |
2021/2~ |
イブラーヒーム・メラード |
内務・地方自治体・国土計画相 |
2022/9~ |
ラトフィー・ブージャマア |
法相 |
前アルジェ裁判所検事長 |
ラジーズ・ファーイド |
財務相 |
2023/3~ |
ライード・ラビーガ |
ムジャーヒドゥーン相 |
2021/7~ |
ユースフ・ベルマフディー |
宗教問題・ワクフ相 |
2019/4~ |
カマール・ビダーリー |
高等教育・科学研究相 |
2022/9~ |
ムハンマド・サギール・サアダーウィー |
国民教育相 |
前教育及び職業訓練・教育担当大統領顧問 |
ヤーシーン・マフディー・ワリード |
職業訓練・教育相 |
前知識経済・スタートアップ・零細企業相 |
ザヒール・バッラルー |
文化・芸術相 |
前文化・芸術省事務次官 |
ムスタファー・ヒーダーウィー |
青年相 |
前高等青年評議会会長 |
ワーリド・サーディー |
スポーツ相 |
前アルジェリア・サッカー協会会長 |
アリー・ザルーキー |
郵便・情報通信相 |
元鉄道関連会社「レール・テレコム」社長 |
スーラヤ・ムールージー |
国民連帯・家族・女性問題相 |
前文化・芸術相 |
シーフィー・ガリーブ |
産業相 |
元産業大学学長 |
ユースフ・シュルファ |
農業・地方開発・漁業相 |
前運輸相 |
ムハンマド・ターリク・ベラリービー |
住宅・都市計画相 |
2021/2~ |
ムハンマド・ブーハーリー |
商務・貿易促進相 |
前アルジェ第3大学経済学部教授 |
タイイブ・ザイトゥーニー |
国内貿易・国内市場規制相 |
前商務・貿易促進相 |
ムハンマド・マジヤーン |
通信相 |
元駐モザンビーク大使 |
ラフダル・ラフルーフ |
公共事業・基礎インフラ相 |
2022/9~ |
タハ・ダルバール |
水利相 |
2023/3~ |
サイード・サアユード |
運輸相 |
前オラン県知事 |
フーリーヤ・マダーヒー |
観光・手工業相 |
前スキクダ県知事 |
アブドゥルハック・サーイヒー |
保健相 |
2022/8~ |
ファイサル・ベンターリブ |
労働・雇用・社会保障相 |
2023/3~ |
カウタル・クリークー |
議会関係相 |
前国民連帯・家族・女性問題相 |
ナジーバ・ジーラーリー |
環境・生活相 |
前アルジェ県議会議長 |
ヌールッディーン・ワダーフ |
知識経済・スタートアップ・零細企業相 |
同省スタートアップ支援機構部長 |
(出所)国営通信「APS」など各種情報をもとに筆者作成。
評価
タブーン大統領が今年9月の大統領選挙で勝利し、今後5年間の政権運営に取り組む中で、第2次ラルバーウィー内閣が発足した。最大の注目点は、シェングリーハ参謀総長の入閣である。国防相付特命相というポストは、ブーテフリカ政権期の2005年5月に新設され、グーナイジーヤ元ANP参謀総長(当時)が2013年9月まで務めた。その後、当時現職のガーイド・サーリフ参謀総長が副国防相(2013年9月~2019年12月)に着任したことに伴い、同ポストが廃止され、第1次タブーン政権期でも再設置されることはなかった。
今般、シェングリーハ参謀総長が政権入りしたことで、軍部が全ての分野に公に関与することが可能となる。特に、対モロッコ強硬派として知られる同参謀総長の意向が、アルジェリアの外交方針に大きく反映されると予想される。両国は西サハラ問題などで対立し、2021年より断交中である。この先、アルジェリアがあらゆる手段を用いて、モロッコに更なる圧力をかければ、両国を取り巻く地域情勢がより緊迫化する恐れがあるだろう。
【参考】
「アルジェリア:大統領選挙の最終結果発表、タブーン大統領の再選」『中東かわら版』No.70。
(主任研究員 高橋 雅英)
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